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【BOOK】競馬は勝ち負けよりも“負ける美学”に裏打ちされたスポーツ 「これを読めば有馬記念は当たりますよ」 作家・早見和真さん『ザ・ロイヤルファミリー』 (1/3ページ)

★作家・早見和真さん『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮社2000円+税)

 有馬ウィークの読書には、これしかない! 青春小説からミステリー、家族小説など幅広く執筆している筆者渾身の競馬小説だ。“血統のスポーツ”とも言われる競馬界を徹底取材。父と子という永遠のテーマが背景にある。「これを読めば有馬記念は当たりますよ」というありがたい託宣とともに、予想もお届けする。(文・竹縄昌 写真・酒巻俊介)

 --幅広いテーマで書かれているが、競馬小説に挑戦したきっかけは

 「いろいろ書いてきたという感覚はないんです。あえて言えば何が得意か分からないままデビューして、分からないから青春小説や家族小説を書いたりしていました。でも、デビューから10年経ってなんとなく分かってきて、その意味で本作は書く前から自分の“大本命”になり得るものだろうと思ってました」

 --というと

 「僕は、デビュー作から父親と息子を書いてきたことに気づきました。他のテーマに覆い隠しながらも、女性死刑囚が主人公の『イノセント・デイズ』」でさえも、弁護士の父子を書きました。今回はそれを正面から書こうと。それが(執筆の動機の)片側とすると、もう片方があるんです」

 「僕は書くという行為が本当に苦しいんです。人と話しているのは好きなのに、誰とも会わず、今まで(現実から)逃げ続けてきた自分と向き合わなければならない作業はほんとにしんどい。他の作家が書くことが楽しいと話していると、うらやましいと思う半面、畏怖していました。そんな話を新潮社の人に話したら、売れることを考えないでいいから、僕の人生で一番楽しかったことを書いたらと言ってくれたんです」

 ■父と子の血の継承にワクワク 

 --それが競馬だった

 「野球はしんどいばかりだったし、女の子は僕を傷つける対象でしかなかったので、考えてみたらふと、大学時代に見ていた競馬を思い出しました。競馬の魅力って何だと問われたら、それは圧倒的に血の継承ということだった。応援してきた馬の子供たちがでてきたときのワクワク感と、父と子を書かなきゃという片方の自分が完全に結びついた感じがあって、この小説は本当に言い訳のできないものとして挑みました」

 --売れることを考えないでいいとはすごい

 「同じ出版社の『イノセント・デイズ』が少しだけ売れてたし、賞を取ったご褒美でしょう」

 --取材はいつ頃から

 「2014年ごろから。取材先は牧場、セレクトセール、全国の競馬場、調教師、馬主さんたち。北島三郎さんには会えませんでしたが、行きたいところは行けました。騎手では川島信二騎手とすごく親しくなりました」

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