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【続々・長生きは本当に幸せか】日本でも始まった「がんゲノム医療」は夢の治療法なのか? (2/2ページ)

 もちろん、自由診療では、すでにいくつかの医療機関で実施されています。先日、NHK特集で、がんゲノム医療が取り上げられ、ステージ4の前立腺患者(63歳)の回復例が紹介されていました。この患者は、がんが肺やリンパ節などに転移し、手術では除去できないため抗がん剤の投与を受けていました。そこで、シークエンスを受けたところ、ほかのがんで承認されていた治療薬に効果が期待できることが分かったのです。投与されると、がんは小さくなり、ほぼ完治しました。

 分子標的薬の始まりは、2001年にアメリカで承認された慢性骨髄性白血病の治療薬であるイマチニブです。これにより、血液のがん、白血病患者は10年以上も生存期間が伸びました。

 その後、さまざまながんに対する分子標的薬が開発されてきました。最近、話題になったオプジーボは、いまや保険適用され悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がんなど7種類のがんの治療薬として使われています。分子標的薬は、研究が進むにつれ、異なるがんでも特定の遺伝子に変異がある場合には効果があることが分かっています。たとえば、アバスチンは大腸がんや非小細胞肺がん、乳がん、卵巣がんなどに使われています。

 ただし、保険適用されても、薬価は高く、オプジーボの場合、2週間に1回の点滴投与が基本で、1カ月当たり約82万円(保険適用3割負担で約25万円、高額療養時制度適用で約8万3000円)です。ゲノムシークエンスで、変異が見つかる可能性は5割ほど。それに見合う医療ができる患者は1~2割とされています。遺伝子異変が見つかっても、対応する分子標的薬がまだ開発されていないことが多いのです。すべては今後の研究開発次第といえます。

 ■富家孝(ふけ・たかし) 1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営の後、「ラ・クイリマ」代表取締役。早大講師、日本女子体育大助教授などを歴任、新日本プロレスリングドクター、医療コンサルタントを務める。『ブラック病院』(イースト・プレス)など著書計67冊。

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