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【BOOK】大阪・京橋に実在したキャバレーを舞台に 都会だからこそ成り立つ優しさを書きたくて 高殿円さん『グランドシャトー』 (2/3ページ)

 --たしかに難しそうですね

 「でも、いろんな出会いがあって、助けられました。千日前の大きなキャバレーで支配人を何十年もやっていた方と会えて、システムのことから、食事のこととか、こんなホステスがいたとか、貴重なお話を聞けた。大路という登場人物のモデルになってもらいました。そんな風に、行くところ行くところで取材に応じてくださる方がいた。ホステスさんどんなところに住んでたかなぁ…って、ふらっと中崎町に行ったら、また出会う。巡り合わせみたいなことがたくさんあって、お前が書かなあかんって誰かに言ってもらってる気がしました」

 --主人公が暮らす地蔵長屋、魅力的です

 「中崎町には本当に長屋が残っていて、若者がカフェにしたりとか、いろんな人が入ってきてレトロな雰囲気を楽しんでる。なぜ古い街並みが残ったかって言うと、お地蔵さんがぐるっとその街を囲んでるんですね」

 「その地蔵盆に行って、80歳ぐらいのおばあちゃんに聞くと、空襲のとき、お地蔵さんのところでピタッと火が止まったって言うんですよ。だから手厚く守ってるって」

 --主人公も街に守られている感じです

 「あのね、匿名性って一種の優しさやと思うんです。もちろん攻撃的だったり差別したりは論外ですけど、誰でもとりあえず受け入れる、見て見ぬふりもしてあげる、っていう都会だからこそ成り立つ優しさを書きたかった」

 「お地蔵さんのお世話なんかも、なんとなく受け継がれてて、誰がやってるか知らなくても、いつもきれいになってる。そういうアバウトさが最高! と感じました。町の文化が優しさにつながっていく。重箱の隅つついて人を叩くような風潮が強まってるけど、息苦しいですよね。できる人がやればいいし、余計なことは聞かない。社会のいちばんいいあり方じゃないですか」

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