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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】蔵復活のきっかけは遠距離恋愛結婚!? 栃木県・鳳凰美田 (1/2ページ)

 小林酒造(栃木県小山市)が醸す鳳凰美田(ほうおうびでん)は、日本酒人気ランキングで、栃木県の1位に輝く銘酒だ。専務で杜氏の小林正樹さんは、東京農大出身。同窓には、2年上に十四代の高木顕統(あきつな)社長、同期に“夏子の酒”の久須美賢和社長、2年下に南部美人の久慈浩介社長がいる。とりわけ高木社長の酒づくりには感銘し、蔵元自らが杜氏を担うスタイルや、酒づくり全般に影響を受けた。

 小林専務が蔵へ戻って来たとき、会社の経営は芳しくなかった。「私たちの年代は、みんなそう言いますよね。建て直すのに大変だったって。でもうちはガチですから。本当に1ミリも余裕なく、倒産寸前だったんです」

 しかし、小林専務が6年の遠距離恋愛を乗り越えて結婚したことが、蔵復活のきっかけとなった。お相手の女性は、岩手県の工業技術センターで技術指導をする、日本酒の専門家だったのだ。そこで、奥様が酒質の設計を担当し、小林専務が杜氏としてつくりを担当することになった。夫婦二人三脚でつくりあげた新しい酒は、鳳凰美田と名付けられ、二十数年前に発売となった。たった100石、一升瓶にして1万本という、小さな船出だった。

 その瑞々しくフルーティーな味わいは、今でこそ「流行りの酒」と若い日本酒女子が飛びつくが、ようやく黒字に転じたのは15年前のこと。10年前まで、関西圏に販売店が一軒もなかったのは、「営業に行く交通費がもったいなくて」と言うから、苦労のほどがわかる。

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