記事詳細

【がんを死滅させる「第2のメス」の実力】「免疫チェックポイント阻害薬」を組み合わせることで相乗効果が期待 肝がんの生存率向上を目指す「ナノナイフ治療」 (1/2ページ)

 肝がんの治療は難しい。今年3月、国立がん研究センターが更新した「5年生存率」は37%、「10年生存率」は15・6%である。とはいえ、2018年に分子標的薬の「レンバチニブ(商品名・レンビマ)」が登場し、10年以上も前に保険適用された分子標的薬の「ソラフェニブ(商品名・ネクサバール)」しか使えなかった時代と比べ、治療成績は向上している。さらに近い将来、免疫チェックポイント阻害薬も使用可能になる見込みだ。実は第2のメス「ナノナイフ治療(IRE)」も、免疫との関係が深いという。

 「IREは、高圧のパルス電流でがん細胞にナノメートル(10万分の1ミリメートル)の穴を開けて死滅させます。それを処理する段階で、免疫ががん細胞を認識し活性化する可能性を秘めているのです」

 こう話すのは、東京医科大学臨床医学系消化器内科学分野の杉本勝俊准教授。昨年7月、先進医療制度で承認された肝がんに対するIREの研究を進めている。

 IREで穴が開いて死滅したがん細胞は、マクロファージなどの免疫細胞が処理すると考えられている。マクロファージは、体内の細胞の死骸や外部から侵入した異物などの処理係で、丸飲み(貪食=どんしょく)し、がん細胞や細菌などの特徴をT細胞など他の免疫細胞に知らせる働きを持つ。IREで死んだがん細胞をマクロファージが処理すると、免疫が活性化される可能性があるのだ。

 一方、同じように針を刺して治療するラジオ波焼灼療法(RFA)やマイクロ波凝固療法(MWA)でも、がん細胞の死骸はマクロファージなどの免疫細胞によって処理される。ただし、熱によってがん細胞の死骸が変性しているため、マクロファージが他の免疫細胞へ伝える情報は、正確なものにはなりにくい。死骸の状態が変わり果てて、肝がんを敵と見なす情報がわかりにくくなってしまうのだ。

関連ニュース