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【歴史を知る 日本を知る】被災も残った“奇跡の樽”を守る! 岩手県宮古市で唯一の酒蔵「菱屋酒造店」 (1/2ページ)

 外出自粛が続く昨今。こんな時こそ、歴史や地方の魅力を発信する人の声を聴くのもいい。例えば、国宝の松江城(島根県松江市)の見どころを熱く語る侍大将、東日本大震災で被災した岩手県宮古市でただ一軒の酒蔵を守る杜氏(とうじ)。約400年間、どっしりと立つ名城の姿、「職人の意地」という杜氏の言葉から励ましをもらえる。

 岩手県宮古市で唯一の酒蔵「菱屋酒造店」の杜氏として、酒造りの指揮を執る辻村勝俊さん。大震災では蔵に津波が押し寄せ、高台に必死に逃げた。当時を振り返って、「目の前に観光船が流れてきた。すんごい光景だった」と語る。

 絶望の中にあって酒造りを再開したのは、「仕込みの水が生きていたから。地元の人がこの水をもらいに来て、命をつないだ。命の水で酒を造っていたんですよ」。

 蔵は1852年から続く老舗で、後を継いだ娘さんから「のれんを絶やすわけにはいかない。もう一度、造ってほしい」と言われて、「やるっていわれりゃ、やるさね。職人魂に火が付いたんだね」と辻村さんは笑う。

 被災した蔵にただ1つだけ残った樽は奇跡的に海水が入っていなかった。この酒を「フェニックス」と命名して売り出したところ完売。翌年に仕込んだ酒は、地元の新年祝賀会で大歓迎された。

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