記事詳細

【Youtuberスーツの旅行記】常磐線特急に乗って、浪江焼きそばを食べる旅

 ※この記事は緊急事態宣言発出以前に作成されたものです

 3月14日、めでたく常磐線が9年ぶりの全線復旧を果たしました。福島第一原子力発電所事故による汚染の影響で、除染のうえで地震による破損箇所を修繕したそうですから、運行再開には膨大な時間がかかりました。

 まず始めに、福島第一原発の最寄り駅、大野で降り、駅周辺を2時間ほど歩き回ってみました。復興に携わるダンプカーが忙しく行き交っている姿は頼もしかったですが、一般人が利用できるような施設は線量計の貸し出し施設ぐらいで、あとは帰還困難区域への立ち入りを禁じる柵がひたすら並んでおり、自動販売機すらありませんでした。タクシーもこの町にはなく、隣の富岡町から呼ぶことになるそうです。常磐線の復旧は復興の第一段階であり、まだまだこれからが本番なのだと再確認することになりました。

行き交うダンプカー 行き交うダンプカー

 駅へ戻り時刻表を見ると、次に来る列車は仙台行きの特急とのことでした。食べ物も飲み物も手に入らず、なるべく早く食事にありつきたかったので、一番近い、機能が充実していそうな町で降りることにしました。隣町の双葉駅に施設が併設されているので、そこでも良いかと思いましたが、今回はもうひとつ隣の浪江町まで抜けました。浪江町は役場の前に観光施設を設けて町おこしをしているらしく、観光客を呼び込めるなら、確実に何かあるだろうと思ったからです。

 およそ20分で浪江駅に到着しました。タクシー乗り場がありましたが、タクシーはいませんでした。電話をかけると3分ほどで来てくれました。

 役場へは1キロ。初乗り500円ほどと、誠に恐縮する安さでした。役場の脇には観光客向けの商店街がありましたが、時間がなかったので今回は焼きそばだけ買いに行きました。太麺ということは聞いていましたが、なるほど太い、焼きうどんと呼ぶべき極太の中華麺を使っています。すぐに焼きはじめてくれました。

浪江焼きそば 浪江焼きそば

 よく火が通っているのにシャキシャキなもやしと、分厚い豚肉2枚を乗せて、持ち帰りの大きなパックから溢れそうな量で600円。駅で時間に余裕ができたので一気に食べてしまいましたが、あまりに美味しくて、特製というにんにく入り一味唐辛子(浪江焼きそばの肝だと言われています)を入れ忘れました。

浪江焼きそばを食べるスーツ 浪江焼きそばを食べるスーツ

 帰りもタクシーで送ってもらいました。運転手さんといくらかお話をしました。

「前と比べたら、ずいぶん人が戻ったようですね」
「いま1,000人です。前は500人だったんですけど、この間500人ぐらい戻ってきて。でも前は1万人でしたから、十分の一ですね」

 人口が倍になったのですから、ずいぶん戻ったと言うのは間違いではないのかもしれませんが、浪江町はいまだ多くの空洞を抱えたままのようです。

浪江町仮設商業共同店舗施設「まち・なみ・まるしぇ」 浪江町仮設商業共同店舗施設「まち・なみ・まるしぇ」

 なんだか複雑な気持ちになりましたが、少なくとも焼きそばは美味しかったです。純粋な観光として質の高い体験ができました。ぜひとも次回は他の商店を併せて回りたいものです。

「運転手さんありがとうございました。とにかく、まずは開通誠におめでとうございます」
「ありがとうございます。これでずいぶん便利になりました」

 少ないですが親切のお礼にチップをお渡しして降りました。浪江のタクシーには営業時間があるようで、そのギリギリまで運転していただきました。

 すると今度は、小高駅から来たという女性陣にお会いしたので、お話ししました。震災前は特急が停車していたのに、今は全部通過となってしまい、嘆いているようでした。

「ちょっとそれは困りますよね。何とかならないのかな。でもまずは何より、開通おめでとうございます」
「本当ね。ありがとうございます。前は大変だったのよ」
「ええ、列車代行バスは1日1便だけでしたよね」

 常磐線開通前しばらくの間は、1日1便だけの代行バスと普通列車、特急列車を何度も乗り換えるか、逆方向の仙台まで北上して、新幹線に乗り換えるかしないと、東京へは行けなかったのです。陸の孤島だったのが、列車1本で東京へ行けるように変わりました。

 浪江発上野行き、常磐線経由の切符を新鮮な気持ちで眺めていると、ひたち号がやって来ました。乗車し、3時間で到着です。

 まだ復興半ばの被災地と東京の中枢は、確かにひとつの線で結ばれていました。上野を去り行くひたち号の姿に、限りない頼もしさを感じました。

※この記事は、以下の動画を元にして書かせて頂きました

 ■スーツ YouTuber、1997年生まれ。2017年に史上最長の鉄道乗車券「最長往復切符」の旅の動画投稿を機に本格的な活動を開始。2018年には初の海外旅行として、鉄道と船だけでヨーロッパへ行き、ついでに世界一周して帰国した。青春18きっぷを使った体力勝負の旅行から、ファーストクラス利用の超豪華旅行まで、様々な種類の動画を投稿している。

関連ニュース