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【BOOK】“最後の未知”と呼ぶ「死」と真正面から向き合った短編小説集 石原慎太郎さん『死者との対話』 (3/3ページ)

 --弟の裕次郎さんは、がんで苦しみ抜いて亡くなった

 「苦しみ死ぬのはイヤだね。周りの人間も見ていてつらいし、当人もつらいだろうしね。葉山の灯台の見えるところに、弟のために記念碑を建てたんです。子どもたちには、そこに並んで私の記念碑も建ててくれと頼んでいます。墓代わりにね。そして、遺骨の半分は海へ散骨してもらう。やっぱり海に帰してもらいたいからね」

 ■『死者との対話』(文藝春秋・1700円+税) 「面白い小説を書こうと思うんだが」。著者を思わせる作家は、今興味があるものを“分身”に問われ「それは端的に俺が死ぬことだろうな」と自答する。「それは俺の老いのせいだな。五年前にあの脳梗塞をやって以来体が完全には言うことを聞かなくなって…だから多分もう目の前の俺の『死』についてばかり興味があるのさ」(『-ある奇妙な小説-老惨』)。戦争責任、延命治療、私小説…「死」をテーマに描く短編集。

 ■石原慎太郎(いしはら・しんたろう) 1932年、神戸市出身。87歳。一橋大学卒。55年、大学在学中に書いた『太陽の季節』で文学界新人賞を受賞し、作家デビュー。56年同作で芥川賞。68年には参院議員に当選し、政界へ打って出る。環境庁長官、運輸相(いずれも当時)、99年から2012年までは東京都知事を務めた。主な作品に『生還』『弟』『天才』などがある。

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