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【ぶらり、ぶんがく。本と歩く】なぜここに?と言いたくなるロケーション 徳冨蘆花『不如帰』 (2/2ページ)

 半年後、失意の浪子は1人で浜を歩く。〈不動祠の下まで行きて、浪子は岩を払うて坐しぬ。この春良人と共に坐したるもこの岩なりき〉。しかし、眼前に広がるのは、あの日とは対照的に、雲が垂れ込めた暗い海だった…。

 仲を引き裂かれたまま、病を悪化させた浪子は永眠する。愛しい人への最後の手紙は〈身は土と朽ち果て候うとも魂は永く御側に付き添い--〉。さすが名作、いま読んでも、ヒロインのけなげさ、慕情の切なさが胸を打つ。

 今年は海水浴場もオープンできず、夏の海岸は賑わいとは無縁。石碑の向こうには寂しげな海が広がっていた。(阿蘇望)

 ■不如帰の碑 神奈川県逗子市新宿5の5

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