記事詳細

【ノンフィクションで振り返る戦後史】高度成長期が終わり別の変動期へ…東京の街やカルチャー描写に共感 坪内祐三「一九七二」 (1/2ページ)

 1972年は、グアム島からの横井庄一の生還、連合赤軍あさま山荘事件、田中角栄の「日本列島改造論」発表から、「木枯し紋次郎」のテレビ放映や川端康成ガス自殺まで、インパクトを残す出来事の多発した年。

 著者は、この年を、東京オリンピックや大阪万博など高度成長期の大きな文化変動が終わり、別の時代がはじまった時期と捉えて論ずる。カテゴリー的にはノンフィクションでなく評論。

 ただ、著者と全く同年代の私は、同書で描かれる、東京の街や、カルチャー描写に何度も頷いてしまう。例えば、渋谷の公園通り入り口近くにあった大盛堂書店に関する記述。「手すりが色褪せスピードの遅いエスカレーターも懐かしいし、二階には本屋でなくどこかの保険会社が入っているのも懐かしいし、『本のデパート』というコピーも懐かしい」とある。地下にミリタリー・ショップが併設されていたと述べられると「ああ、あったなあ…」と思い出す。

 この年には、情報誌「ぴあ」も創刊した。映画少年だった著者は、「その情報の一つ一つが輝いて見えた」と描く。演芸好きだった私が同誌に出会うのは数年後だが、現地に赴かなければわからなかった「浅草松竹演芸場」などの出演者情報が誌上で見られるのにドキドキしたのと感想がかぶる。

 「若者音楽がビッグビジネスとなっていく」の章では、矢沢永吉の「キャロル」が同年、テレビ番組「リブ・ヤング」に登場した際のエピソードを扱う。番組を見たミッキー・カーチス、そして共演した内田裕也は、共に衝撃を受け、即、プロデュースを持ちかけるも瞬時の差でミッキー・カーチスに軍配があがったという。