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【新書のきゅうしょ】古代から江戸時代まで…芸能史の変転 林屋辰三郎著「歌舞伎以前」(岩波新書・1954年) (1/2ページ)

 時の変化に連れて、回り灯籠のように主役が移り変わるのが芸能の世界。私の幼少時は歌謡御三家全盛期だった。盆正月、親戚が集まる前で、西郷輝彦の「星のフラメンコ」を「チャチャチャ!」と耳の横で掌を打つ振り入りで歌って喝采を浴びた記憶がある。しかしわずか数年後にはグループサウンズに興味が移った。

 マチャアキ、ムッシュがフロントで歌い踊る「バン・バン・バン」(byザ・スパイダース)のカッコよさに痺れる。と言いつつブームは1~2年で終わり、その後はよしだたくろうや井上陽水のフォークソングがメインストリームに。で、1980年代以降はタモリ、たけし、さんまのビッグ3を筆頭に人気者が続々登場する「お笑い芸人王朝」が長く続く。

 芸能史の変転を古代から歌舞伎の登場する江戸時代までたどるのが同書。例えば、琵琶は、もともと胡人の楽器で、唐代にもてはやされ日本に伝わり正倉院にも遺品があると述べる。それが平安時代に散所民の遊芸として広まり、遊女が弾き、盲目の法師の世すぎの業へと変化。そして「奢れる人も久しからず」を語る「平家物語」の琵琶法師による芸になったと描く。

 また、南北朝内乱期には「乞食の所行なり」と公卿の日記にしるされた猿楽は、農村から京都に伝わり、能、狂言へと発展した。世阿弥が同朋衆として将軍家光に引き上げられ、地位も向上する。しかし、家光から義教へと時代が変わると、彼がひいきにしていた世阿弥の甥、音阿弥が重んじられるようになる。世阿弥は仙洞御所の出入りを禁じられ、72歳で佐渡島に流される。

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