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【ぶらり、ぶんがく。本と歩く】「六文銭」ひるがえる実りゆたかな土地 池波正太郎『真田太平記』 長野県上田市・池波正太郎真田太平記館 (1/2ページ)

 〈亡き太閤殿下の御恩忘れがたく、この上は当上田の城に立てこもり、いさぎよく戦って討死をいたし、わが名を後代にとどめたく存ずる。西上のおついでに、ま、一攻め攻めてごらんあれ〉

 『真田太平記』は時代小説の大御所、池波正太郎(1923~90)による不朽の名作。文庫本で全12冊に達する超長編は、武田氏滅亡から犬伏の別れ、大坂の陣を経て松代移封まで、真田家40年のドラマを活写する。どこを読んでも面白いが、前半から中盤の見せ場といえば知将・真田昌幸が徳川軍を二度にわたって退ける上田城攻防戦だろう。

 ご承知の通り、昌幸と次男の幸村は、結局は敗軍の将となる。しかしその戦いぶりは痛快そのもの。巧妙極まる駆け引きや鬼神のごとき奮戦とともに、熱い心意気や強固な信頼関係によって、惚れ惚れとする人間像が浮かび上がる。

 〈昌幸も幸村も、「運命に逆らいぬいた……」男たちであった〉

 上田城には小さな櫓しか残っていないが、崖上にあるから北陸新幹線からも眺められる。周囲の市街地は再開発されている。それでも古地図と照らし合わせると、山を背にして、千曲川の分流などを天然の堀とした難攻不落の城の様子を思い浮かべることができる。

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