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【BOOK】犬と出会い救われる死 人類の愚かしさ悲しさ表現するのに効果的 馳星周さん『少年と犬』 (2/3ページ)

 --今の世界をどう見ますか

 「人間って僕も含めて愚かだなって思います。今のコロナ禍に関しては、大変苦しんでいる人たちがいることはわかった上で言いますが、いい面もあった。それは、4、5月にほとんど全世界的に経済活動が止まったとき、破壊された自然環境が急速に回復したと実証されたところもあるんですね」

 「これは資本主義経済をそろそろ考え直せよ、と地球に言われているような気がしているんです。コロナウイルスだって、たぶん、(経済優先が)中国の奥地でひっそり眠っていたウイルスを引っ張り出してきたんじゃないかな。このままじゃ立ちゆかないという現実を突きつけられている。それを受け入れられるかどうか、その辺が、難しいですね」

 --そういう愚かな人間を止められるのが、無償の愛を注ぐ犬など動物たちじゃないか、その意味で犬を主人公にしていると

 「そう、僕は犬と30年以上暮らしているし、人類という存在の愚かしさとか悲しさを表現するのに、犬を使うのは効果的だと思うんです。とりわけ犬は何万年前かわからないけど、たぶん狼と人間は一緒に暮らすことを選択して共存関係になった。そこから人と犬の暮らしが始まっていて、猫も含めて他の動物と違うところです。牛、馬もいますが家の中で一緒に暮らすのは犬だけだと思います。人類という“種”の存在をあぶり出すのに一番いい存在です」

 --6話の連作短篇ですが、「死」が通底しています

 「“死”といっても、今までの犯罪に関わった人間が死んでいく物語とはちょっと違うんです。死んでいくんだけども、多聞(犬名)と出合い、多聞と暮らしたことによって彼らの中で何かが変わり、救われていく話にしたかったんですね。死ぬことはみんな一概に悲しいこと嫌なことと思っているけど、そうではない。何も考えずただ死んでいったり、失意のうちで死んでいくのと、救われて死んでいくのは同じ死でもなにか違うんじゃないか、という思いがあってそれを書いたつもりです」

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