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【BOOK】犬と出会い救われる死 人類の愚かしさ悲しさ表現するのに効果的 馳星周さん『少年と犬』 (3/3ページ)

 --コロナ禍ですが、今後の作品のアピールポイントなどは

 「今後描かれる現代を舞台にした小説はコロナ抜きでは語れない。みんな、コロナ禍がどう転がるか見極めながら手探りで書いて行くのだと思います。自分がどんな作品を書くかは、本当にその時、その時に書きたいものを書いていくだけなのでわかりません。自分はそういう風にして書くことを許されているのでありがたいなとは思います」

 ■『少年と犬』文藝春秋1600円+税

 仙台市に暮らす和正が出会った1頭の迷い犬。名前はそのタグから「多聞」と知った。東日本大震災から半年後、彼は仕事を失った。ひょんなことから盗品を扱う高校の先輩の運送を手伝い、やがて運転のうまさを買われ外国人窃盗団の逃走のドライバーを勤めることになった。逃走車にはいつも多聞が乗っていた。母にも懐いた多聞だが、ふとした瞬間、多聞は南の方角に進もうとしているのだった。

 その後、多聞は仙台から南に下り、さまざまな土地で事情を抱える人たちと出会いと別離を繰り返す。出会う人々は救いと癒やしを得るのだった。そしてついに多聞がたどり着いたのは…。

 「男と犬」、「泥棒と犬」 「夫婦と犬」「娼婦と犬」「老人と犬」、そして表題作の「少年と犬」の6話の珠玉の感動ストーリー。 (初出 オール讀物 2017年10月号~18年1月号まで不定期連載)

 ■馳星周(はせ・せいしゅう) 1965年北海道生まれ。作家。55歳。横浜市立大学卒業。出版社勤務、書評家などを経て96年『不夜城』でデビュー。中国系マフィアら新宿の裏社会を舞台に描いた同作はノワール小説として評判を呼ぶ。同作で第18回吉川英治文学新人賞受賞と同時に第15回日本冒険小説協会大賞受賞。97年『鎮魂歌 不夜城II』で第51回日本推理作家協会賞(長編部門)受賞。また98年には『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞するなどヒット作を次々と発表、ノワール小説の旗手として文壇に地歩を築いた。近年ではそれ以外の分野にも幅を広げている。直木賞候補には『不夜城』が第116回で初候補。以後、第163回を『少年と犬』で受賞するまで、7回候補となっていた。3年前から競馬ファンとなり、ステイゴールドの血統馬を応援している。

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