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【新書のきゅうしょ】80年代注目の学者が座談会形式で文化考察  高田衛・小松和彦・栗本慎一郎著「伝奇ロマンの深層」(はーべすたあ編集室、1982年) (1/2ページ)

 私の本棚には1980年代初頭、かっぱえびせんで知られる菓子メーカーのカルビーから出ていた新書判スタイルの冊子「はーべすたあ」の数号分が残る。

 サントリーから「サントリークォータリー」、富士ゼロックスからは「グラフィケーション」など文化や社会を論じる企業PR誌が多く刊行された時代だった。

 「はーべすたあ」は、当時注目された経済人類学者の栗本慎一郎がホストになって、学者や評論家などと語る座談会冊子のスタイルである。栗本と、日本近世文学研究者の高田衛、文化人類学者の小松和彦による対話の一冊が「伝奇ロマンの深層」。70年代後半から半村良の「妖星伝」が人気を呼んで、注目されたことなどを受けての企画だろう。

 高田は伝奇ロマンの見本として滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」を挙げる。坪内逍遥の「小説神髄」以来、長い間、伝奇性には文学的価値がないとさんざん否定されてきたと指摘する。そして座談会当時に刊行された伝奇志向のある大江健三郎の「同時代ゲーム」、石川淳の「狂風記」などとあわせ、「現代日本の社会が、文学に対して『伝奇ロマン』を要求している」と論じる。

 小松は、伝奇ロマンが求められる理由を、中央の歴史に対置される「周縁」にある闇の世界を発見し、それとの対比で歴史を見直せるからではないかと話す。ストーリーは多くの場合、周縁的世界に生きる「忍者」や「傀儡師の集団」などと中央権力との闘争との形で描かれる。奇なる属性を帯びた闇の世界の不思議な魅力に読者は惹かれるのではないかと述べる。

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