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【BOOK】中国頼みのアニメ業界に一石投じる“羊飼い” 塩田武士さん『デルタの羊』 (1/3ページ)

 今や「クールジャパン」の代表格となった日本のアニメだが、一皮むけば業界の実態は、かなり過酷らしい。ところが、そこに携わる人々はみーんな温かい…。フシギ世界の“リアル”に塩田武士さんが鋭く斬り込んだ。 文・梓勇生/写真・納冨康

 --アニメ業界を舞台に選んだのは

 「最初は、巨大マネーの流れや製作委員会なるシステム…など“ブラックっぽい部分”に興味を持ちました。成人してからアニメはほとんど見ていなかったのですが、知らない世界だからこそ惹かれる部分、“気づき”を得たい欲求も覚えましたね。というのも最近は、うまくやれることに関して少々、危険信号を感じていたからです。野球のピッチャーでいうならばストライクを『置きに行く』ようなことをしていないか、と」

 --その結果、当初の仮定が違っていたことも

 「アニメ業界のいいところは『産業スパイ』が成り立たないこと。情報がオープンで壁がない。横の風通しがよくて国境も飛び越えてしまう。みんなで協力体制を築く…人間性も穏やかで温かい。たぶん“独自通貨”で動いているんですよ。おカネや時間の代わりに、義理や憧れで生産している。あるいは“あの人と一緒に仕事をしたい”という気持ち。この業界の最大の強みでしょう」

 --それらの人々を「羊」にたとえた

 「羊毛は温かいでしょう。取材をしているとそこに包まれているような気持ちになりました。取材の後から『こっちの方が面白いと思いますよ』なんてメールを度々くださったり…。その羊たちが『製作と制作』『日本と中国』『デジタルと紙』などの対立軸の中でもがいている現実がある。だからこそ“羊飼い”が必要なんですよ」