記事詳細

【BOOK】物語のキャラから聞き出す“物語”…核にある傾聴スタイル 社会性と政治性もしっかり いとうせいこうさん『夢七日・夜を昼の國』 (1/3ページ)

 日記からフィクションを作る、という挑戦だった。その途中、東日本大震災を描いた『想像ラジオ』のサブキャラが浮かんだ。思えば震災10年。「忘れないでよって言われた気がした」。いとうせいこうさんの新作は、夢と現実の境界線や歴史の時間軸を軽やかに飛び越え、思うようにいかない現実を生きる私たちのリアルな感触に斬り込む小説集だ。(文・阿蘇望)

 

 --『夢七日』はどうやって生まれましたか

 「日記を書いてみて、実際にあったことからフィクションを作ろうと考えた。私小説をモチーフにしつつ、私小説をひっくり返すようなものを書こうと思ったんです。最初『僕はこんな夢を見ている』と書き始めたけど、どうも面白くない。だって自分自身が人の夢の話なんて大嫌いなんで(笑)。それで『僕』を全部『君』に変えてみて、『君はこんな夢を見ている』で始まる小説にしたら、圧倒的に面白くなった」

 --「私」(一人称)の視点で描かれる箇所もあるので、多層的になりましたね

 「次は、ずっと目を覚まさない君って誰だろう…と考えていたら、ほんとに突然、『想像ラジオ』の木村宙太が出てきた。好きなキャラクターだったので、自分でも驚きながら、どうしてこうなったの、もっと聞かせてって彼から聞くようにして物語を書いた。向こうから“来てくれた”物語なんです」

 --震災10年を前にしての刊行になりました

 「気づいていなかったんですよ。東北に通って聞き書きした『福島モノローグ』というノンフィクションも近く刊行するのに、10年の区切りは頭になかった。木村宙太に『忘れないでよ』って言われたのかな。あんたが僕のこと書いたんでしょ、ほっとくなよって」

関連ニュース