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【コロナ時代の「逆流性食道炎」対処法】暴飲暴食が続けば…薬が効かない「バレット食道」に 食道がんのリスク増加も

 コロナ禍の“寝正月”で、ズボンのウエストがキツイ…。その状態で、食後に前屈みの姿勢を続けていると、口の中に酸っぱい液が込み上げ、胸の辺りがチリチリ痛むような胸やけに見舞われることがある。このような症状の逆流性食道炎は、加齢、腹圧、姿勢が関わることを前回紹介した。薬局に走り胸やなどの症状に効果がありそうな市販薬に頼る人もいるだろう。それでも症状が治まってくれないことがある。どうすればいいのか。

 「逆流性食道炎の薬は、胃酸を抑える作用が一般的です。逆流する胃酸から食道を守り、食道自身の力で炎症を治すのを待つのです。そのため、薬の服用3~4日後に治るなど、服用と症状緩和にタイムラグが起こりやすいのです」

 こう説明するのは、東京医科大学病院内視鏡センターの河合隆部長(消化器内視鏡学主任教授、日本消化器内視鏡学会副理事長)。

 逆流性食道炎の治療薬は、胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)が代表格。近年、より強力なカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)も登場した。とはいえ、食道炎を直接治す薬ではないので、薬を飲んで胃酸を抑え、食道炎が治るまでにタイムラグが生じる。加えて、治っても、しばらく経つと再発することもよくある。

 「逆流性食道炎の薬を服用しても、暴飲暴食や食後にすぐに寝るなど、従来の生活を続けていると100%再発します。緩んでしまった胃の入り口は、薬で治すことはできないからです」

 手術で胃の入り口を治すような治療は、よほど重症な場合以外は行われていない。逆流性食道炎の治療は、薬の服用と食生活の見直しが基本となる。予防のために、河合教授お勧めの「食習慣の見直し法」(別項)もぜひ取り入れてほしい。

 逆流性食道炎の際に、そもそも食道の粘膜はどうなっているのか。

 「内視鏡検査で診ると、粘膜に潰瘍ができている方や、ちょっとこすれたような状態、全く炎症所見が見られないケースまでさまざまです。実は胃酸の逆流により、食道の表面ばかりでなく内側の組織にサイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質)などによる炎症が生じ、痛みが発生するとされます」

 流れた胃酸が食道の粘膜の内側にダメージを与えると、食道の壁の内側に炎症が起こり、食道を動かす筋肉が厚くなることがある。結果として食道の動きが悪くなり、食べ物がつかえるような症状にもつながるという。

 「症状と内視鏡の所見は一致しないことがあります。炎症で粘膜組織に障害が起きると、扁平上皮からバレット食道(※長時間胃液にさらされた食道の粘膜が、胃液からの攻撃を守るために胃のような粘膜に変性した状態)に変わり、食道がんのリスクが上がります。だからこそ、自己判断せず、症状があるときには内視鏡検査を受けてください」と河合教授はアドバイスする。

 逆流性食道炎と食道がんの関係は、次回紹介する。(取材・安達純子)

 ■河合教授お勧めの「食事の見直し7カ条」

 一、暴飲暴食を控え、腹八分目を心掛ける

 二、最近体重が増えた人は、全体の食事量を少し減らし、減量の努力を

 三、脂っこい食事、肉類などを多くとらない

 四、辛い物など刺激物は避ける

 五、麺類を食べるときも、よく噛んで食べる。飲み込むような食べ方は止める

 六、アルコールを飲み過ぎない。寝る直前に飲むのは止める

 七、食べた後すぐに横にならない

 ■河合隆(かわい・たかし) 東京医科大学病院内視鏡センター部長(消化器内視鏡学主任教授)。1984年東京医科大学卒。99年東京医科大学講師、2005年助教授、08年教授を経て16年から現職。20年11月開催の第100回日本消化器内視鏡学会総会の会長を務めるなど、内視鏡による診断・治療・研究の第一人者である。

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