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【ぶらり、ぶんがく。本と歩く】辞世の句まで「あっぱれダジャレ」 全編にわたって笑い追求 十返舎一九「東海道中膝栗毛」東京都中央区・十返舎一九墓所 (1/2ページ)

 二度目の緊急事態宣言下、やむなく近所からお届けします。自宅から最寄駅である都営大江戸線勝どき駅に歩く途中、東陽院というお寺があって門前に石碑が立っている。「十返舎一九墓所」。もとは浅草にあったお寺が関東大震災で移転して、墓も一緒に移されてきたそうだ。

 十返舎一九(1765~1831年)は江戸時代の戯作者で、代表作はヤジさんキタさんの登場する滑稽本「東海道中膝栗毛」。身代をつぶした放蕩(ほうとう)者の弥次郎兵衛が、旅役者の北八と連れ立って、縁起直しのために伊勢参りの旅に出るお話である。

 二人の人物造形が、まったく主人公らしくない。スケベで下品で非常識。口先ばかりで根性なし。あちこちで迷惑をかけまくる。何をやってもうまくいかない。なのに互いに助け合うわけでもなく、相手を罵(ののし)ったり、足を引っ張ったりする。はちゃめちゃである。だけど嫌いになれないのは、迷コンビが引き起こすドタバタ騒ぎがカラッとした笑いになっているから。

 全編にわたって笑いの追求に余念がない。狂歌のダジャレで締めるのがパターンの一つ。例えば箱根の甘酒茶屋の一幕。手ぬぐいと思ってふんどしをかぶって〈さてこそ恥をさらしなりけり〉。現代人にはわかりにくいけれど、恥さらしとさらし木綿がかかっているのが面白ポイント。そんなオチか!と思うけど、憎めない。次の章ではまた懲りない二人がドタバタ劇を繰り返す。ヤジさんが「かの有名な十返舎一九先生」を名乗る(もちろんバレる)というアクロバティックな趣向も。何をやってでも読者を笑わせてやる、という姿勢が伝わってくる。

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