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【BOOK】社会のタブーにも斬り込み、時代という悪を問いかける 呉勝浩さん『おれたちの歌をうたえ』 (2/3ページ)

 --成功体験よりも失敗や挫折ですか

 「僕自身の挫折はあまりに多い(苦笑)。具体的には、映画を志しながらモノにならず、就職もしない、名も上げられない、何者になりたいのか、よく分からないような生活でしたからね。もちろん根本的には(在日コリアンとしての)出自の問題があります。日本に生まれ、日本で育ち、友達も日本人なのに、ある瞬間『自分は日本人じゃない』と思わされる。勝ちようのない、理不尽なことです」

 --今作では、そうしたタブー視された問題にも斬り込んでいる

 「(江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作の)『道徳の時間』(2015年)では、賞の応募時点で盛り込んでいた『地域差別』などについて改変を余儀なくされました。これは、僕自身の『腕』の問題もあります。何がタブーなのか、それを明かすにはどういう条件が必要なのか? といったことがよく分かっていなかった。だから仕方のない面もあったのですが、悔しい思いをしたこともまた事実です。それをもう1回取り戻す気持ちで、センシティブな問題にもあえて触れました。(タブーを書く)怖さもありますが、僕は避けて通れない、書かねばならないという気持ちが強い。今作で完全に消化しきれたかどうかは分かりませんが…」

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