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【BOOK】行き先縛られず…気楽にスルスル、ふらふら 表題作は普段の自分の素が出ています 保坂和志さん『猫がこなくなった』 (1/3ページ)

 特別に忘れがたい猫、突然伐られてしまった大きなヒマラヤ杉、賢いカラス、隣家の物置に住み着いた赤ん坊連れの女のひと、子猫が命を落とした夜明けまでの夜…。9つの短篇を集めた『猫がこなくなった』を上梓した保坂和志さん。「気楽に書けた」という背景を聞いた。(文・井上志津)

 ◆行き先縛られず

 --ツイッターで「気楽に楽しめる話を集めた」と書いてありましたね

 「よく『これ、気楽に楽しめます』とか言うでしょう。でも、たいていは書いている人は気楽じゃないんですよ。文章を書くって基本的にプレッシャーがかかるものですから。でも、この本は本当に気楽に書きました」

 --気楽に書けたのはなぜですか

 「年齢ですね。60歳過ぎているので。そういうこともできるようになったんです。力を入れずに、スルスルスルスルという感じ。力を入れるのは割と意図してできますが、力を抜くのって努力してもできないですよね。やっぱり年齢とかキャリアの結果だと思います」

 --表題作は「私」と「高平君」が2人でしゃべっているやりとりがおかしいですね

 「こういう楽しさの小説ってあまりないと思うんですよね。笑わせるための小説ではないし、何か変なことを言っている2人がいて、ただリラックスできる感じ。友達にも、新境地じゃないか? みたいに言われました。表題作は普段の自分の素が出ていますね。最後の『夜明けまでの夜』は真面目なことを考えているときの自分です」

 --表題作の結末はどのように決まったのですか

 「結末に来る寸前に考えました。構成を立てませんから、話の行く先を決めていないと、縛られずに、ふらふらふらふら行けるんです。普通の終わり方をしたらつまらない。厳しい現実の法則を見せるのが考えることだと思っている人が多いですが、願望とか希望とか、人に行動を促したり、元気を与えたり、落ち込んでしゃがみ込んだ人をもう一度立ち上がらせたりするものの方が本当の考えだと思って書きました」

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