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【BOOK】「書きたい、書けない」今も繰り返しています 21歳大学生…痛感した力量不足 芥川賞受賞・宇佐見りんさん『推し、燃ゆ』 (2/4ページ)

 --それをこれから探していく

 「探しているというか、文藝賞に応募した1作目には多少なりともそれが滲(にじ)んでいたのかなと今になって思います。ただ文章が未熟で描ききれていなかった自覚があるので、いつかちゃんとした形で産み落とせたらいいなと」

 --描ききれていないという意味は

 「自分のなかにある蟠(わだかま)りをほぐすために書いてきたけれど、まだ視野が狭かったりして書けなかったものがあるということです。小学校のころに“小説を書こう”という授業があって物語を書き始めたときから、『書けない』という感覚はありました。本屋さんに売ってる本と比べテーマが浅いし、文章も下手。『書きたくても書けないことがある』と気づきました。例えば社会に出ていない子供には疲弊した社会人の心情はリアルには書けません。あるいは身にしみて経験したことでも、単純に筆力が足りなくて書けないこともある。今も『書きたい、書けない』を繰り返しています。1作に1回ぐらい、あ、この場面は書けたということがあって、そのときは書く喜びを感じますが、やっぱりもっと正確に、もっと適切な形で書きたいと常に思っていますね」

 ◆人の死は別物

 --具体的に「書けない」と思ったテーマは

 「幼い頃、親戚などに立て続けに訃報があって、お葬式に行く機会が多かったんですね。童話やテレビドラマなどでイメージしていた“死”とはまるきり別物で、現実における喪失がどれほど大きなものなのか考えるきっかけになりました。当時の日記に“私には人の死はまだ書けない気がする”と書いたんです。あまりにもそこにあるものが重くて、自分の文章力ではまだ書けるものではないなと。アニメでも人がバンバン亡くなるシーンがありますが、それも私が目の当たりにした死とは違うと思いました。今も真正面から書くのは躊躇しますし、書いていません」

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