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【ぶらり、ぶんがく。本と歩く】生きるとは…藤村の衝撃的な別離に思いを馳せる 島崎藤村「春」 東京都中央区「島崎藤村・北村透谷記念碑」 (2/2ページ)

 青木(透谷)がハムレットの一節を吟じる序盤のシーンに、岸本(藤村)の尊敬と思慕がにじむ。

 〈この友達に導かれて、今まで自分が考えていたよりは、更に深く狂皇子の悲壮な精神を感得したような気もした〉

 本書には多くの文学仲間が登場し、それぞれが自身の道を探し求める姿が描かれるが、そんな中で、透谷が自死する。まだ25歳だった。

 〈彼は生の荒廃に堪えられなかったらしい。庭の青葉のかげで、彼は縊(くび)れて死んだ〉

 藤村にとっては、衝撃的な別離だった。

 〈幾度か彼はあの友達の後を追って、懐剣を寝床の中に隠して置いて、悶死しようとしたのである〉

 傷つきながらも旅に出た藤村は「どうかして生きたい」という心境に至るのだが、読んでから碑を眺めると、刻まれた名前がぐっと陰影を深めて見えてくる。春。別れと出会いの季節。 (阿蘇望)

 

 ■中央区立泰明小学校 東京都中央区銀座5の1の13

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