記事詳細

【BOOK】庶民の人生の辛い部分に寄り添ってきた「浪花節」 浪曲師・玉川奈々福さん『浪花節で生きてみる!』 (3/3ページ)

 --浪曲の入門書としても読めます

 「浪曲はオリジナルの演題は少なく、講談からの移入が多いんです。落語が笑いなら講談は怒りであり歴史。登場人物が本音・心根を悟りながら流されるままに生きる姿が浪曲かもしれません。浪花節的な実人生は難しいですが、私は演じることで、その醍醐味を感じています」

 --三味線との二人三脚の芸が浪曲とも

 「譜面や決まりごとに縛られず、自由に三味線が物語を感情豊かに描いてくれます。お互いが、あ・うんの呼吸で感情を通わせ合ってひとつの芸に向かっていく。2人の息がピタリと合ったときは堪えられない。それが浪曲、浪花節です」

 ■四半世紀もがき

 --四半世紀、浪花節と生きてみて

 「今に至るまで、自分がやりたい理想の芸には程遠く苦しさばかり。スマートに走ってきたとは思えず、もがき続けてきました。でも、浪曲が今、息を吹き返したのは、世知辛い世の中で切なく辛い気持ちで生きている人たちを浪曲が抱きしめ続けてきたからだと思います」

 ■浪花節で生きてみる!(さくら舎)1760円

 浪曲師(語り手)と曲師(三味線弾き)の二人一組で物語を語る日本の伝統芸が浪曲。浪花節とも呼ばれ、第一章は森の石松や平手造酒など、演題に登場する人物中心に浪曲の世界を解説。第二、三、五章は、編集者から三味線教室に通い出し、浪曲に魅了され、いつの間にか人気浪曲師になっていたという「人生は何が起こるかわからない」を地でいく筆者の半生が綴られる。浪曲の歴史解説や浪曲界に影響を与えた演者の紹介もあり、浪花節に生きた25年間の記録。浪曲入門書でもある。

 ■玉川奈々福(たまがわ・ななふく) 神奈川県出身。清泉女子中学高等学校を経て上智大学文学部卒業後、筑摩書房に編集者として勤務。1994年、日本浪曲協会の三味線教室に参加。翌年、玉川福太郎(二代目)に曲師として入門し、「美穂子」の芸名をもらう。師の勧めで2001年より浪曲師としても活動。06年に「奈々福」と改め、名披露目(なびろめ)をする。18年、文化庁文化交流大使としてイタリア、ポーランドなど7カ国で公演。浪曲界に新たな息を吹き込む卓越したプロデュース力が評価され、19年に第11回伊丹十三賞を受賞。著書に『語り芸パースペクティブ-かたる、はなす、よむ、うなる』(晶文社)がある。

関連ニュース