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【BOOK】「正義」と「悪」は明確に線引きできないもの 貫井徳郎さん『悪の芽』 (1/3ページ)

 コワーい物語である。知らぬ間に加害者になっていたり、一転して被害者としてドン底に突き落とされることも。凝りに凝った設定で定評のある貫井徳郎さん。新作ミステリーで描かれた出来事は明日アナタの身に起こるかもしれない。 文・梓勇生/写真・川口宗道

 

 --発端はアニメコンベンション会場で発生した無差別大量殺人。実際の事件がモチーフに

 「それはないですね。むしろ“似た事件”があれば、それに似ないように気を使います。僕は、社会派の作品を書いたつもりはなくて、思いがけなく『重荷』を背負わされた男の苦悩を描きたかった。(主人公の男が)昔やったこと(いじめ)は、刑法上の罪には問われない。“自分のせいではない”と言いつつ罪の意識に苦しめられる」

 --タイトル通り、思いもかけないところに「悪の芽」がある

 「(これまでの多くの作品は)『悪』があって、主人公が糾弾する、という形でしたが、僕が書きたいのは糾弾されるのは、主人公、あるいは書いている僕(作家)なのです。自分の中にあるダメな部分を小説を書くことで戒めているのかもしれません」

 --ネット社会における非難や告発が、ひとつのキーワード

 「僕は『正義』というものに懐疑的で、それがいつ『悪』に変わってもおかしくない。つまり“その2つの境界は、明確に線引きができないと思うのです。ネットで『正義』を振りかざして非難している人も見方によっては『悪』になってしまうことがあるでしょう。『決めつけ』が嫌いで、そうした意識が(今作にも)にじみ出た部分はあると思いますよ」

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