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【BOOK】「なぜ書くのか」中継する意欲作 デビュー30年目恩田陸さん『灰の劇場』 (1/3ページ)

 「小説を書く実況中継」-。小説はいかにして生まれるかを小説を書くことで、自らに問いかけた意欲作。エンタメ系作家としても名高い恩田陸さんが季刊の純文学系雑誌に6年間連載した。デビューから30年目を迎えた恩田さんに創作のきっかけなどを聞いた。 (文・竹縄昌 写真・飯田英男)

 --書き始めるきっかけは、自殺した2人の中年女性の身元が分かったという小さな記事だけだったとか

 「そうです。20年ほど前に記事を見たときから、心に棘のように引っかかっていて、いつか書こうと思っていたのですが、なかなか機会がありませんでした。たまたま次作の相談で、河出の担当編集者にこの話をしたら、じゃあ、それでいきましょう、ということになりました。切り抜きを取っていたわけでもなかったのですが、後日、記事を見つけてきてもくれました」

 --エンタメ系の小説誌ではなく『文藝』という純文学系の雑誌だったのは

 「書き始めるのがもっと前だったら、エンタメ作家なので、ドラマチックな話にしていたと思うんです。でも、逆に『文藝』という媒体だったので、そうしなくても書くことができるなと思った部分もあります。デビューして以来ずっといろいろなジャンルのエンタメ小説を書いてきたのですが、そうではない話を劇的にしなくても書けるかなと思いました」

 --チャレンジでもあったわけですね

 「そうですね。当初、この2人の記事から想起されるいろんな話を並べることが構想にありました。でも、実際に書き始めると、私が書きたいことは2人に実際に何が起きたか、ということではなくて、なぜ私がこの記事に引っ掛かりを感じたのかを書きたかったんだということに気がついたんです。ですので、小説を書く実況中継のような形になりました」

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