記事詳細

【BOOK】「なぜ書くのか」中継する意欲作 デビュー30年目恩田陸さん『灰の劇場』 (2/3ページ)

 --章立ても、「0」が作者自身のこと。「1」がフィクションの2人のこと。そして「(1)」が舞台化する場面で、これら「0」「1」「(1)」が繰り返し書かれていて実験的でもあります

 「書いているときは無我夢中で実験的なことをしているという意識はなかったんです。ほんとうに試行錯誤で、その試行錯誤の過程をそのまま書いていて、どこに行き着くか全くわからない。真相もわからないし…結局、わからないということがわかったということかもしれません」

 --自身の心の動きを描きながらの私小説ということでもないですね

 「私小説を書いているつもりはなくて、事実に即して書いているので、ドキュメントという感じになるのかな。そこは私小説とは違い、気持ちが入らないように突き放して書いたつもりです」

 --他の小説も書きながらでしたが、心のバランスなどは

 「いつも違うタイプの小説を並行で書いているので、それがごちゃ混ぜになることはないのですが、(フィクションである)『1』の部分をどう書くかとか、どうすれば終わるのか、をずっと考えていたので、脳みその違うところを使っていた、という感じですね」

 --書き終えていかがでしたか

 「刺さっていた棘が抜けたのですが、でも跡は残っているという感じです。棘が抜けたという意味では達成感はありますが、跡が残っていて本来の達成感ではないですね」

 --恩田陸という作家を恩田陸さんが外側から見たということでもありますか

 「そうですね。本当にジャンルがわからない小説です。1回しか使えない禁じ手を使っちゃったなあ、という思いはあります。でも、まだ小説の可能性はいろいろあるなあ、って思ったので、その意味で記念になる小説になりました」

関連ニュース