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【BOOK】「なぜ書くのか」中継する意欲作 デビュー30年目恩田陸さん『灰の劇場』 (3/3ページ)

 --30年という節目に『文藝別冊 恩田陸 白の劇場』も出ました

 「『灰の劇場』のサブテキストとしても読め補完していますから、セットで読んでいただければと思います」

 ■『灰の劇場』河出書房新社1870円(税込み)

 小説家としてデビュー間もない「私」が1994年にたまたま目にした新聞の小さな記事。それはその年の春に東京・多摩のある橋から飛び降りて死亡した2人の中年女性の身元がわかったという内容だった。記事は2人が同居していたことを伝えていた。そのとき以来、この記事は作者の心の中に「棘」のように刺さったまま。さまざまな「なぜ」が脳裏から離れず、ついに小説化しようと挑戦する。「私」はその一方で、舞台化するため演出家との打ち合わせなどにも奔走するのだが…。章立ての「0」は作者自身のこと。「1」がフィクションの2人のこと。そして「(1)」が完成した「1」の小説を舞台化する場面。それらがリフレインされ、虚構と現実が織り成す世界観。 (初出「文藝」2014年春季号~2020年春季号)

 ■恩田陸(おんだ・りく) 作家。1964年青森市生まれ。仙台市出身。56歳。92年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補(91年)となった『六番目の小夜子』が刊行され作家デビュー。ホラー、SFなど幅広くエンタメ系小説を執筆。2005年、『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞と第2回本屋大賞を受賞。06年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞受賞。07年第20回山本周五郎賞を『中庭の出来事』で受賞。17年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木賞と第14回本屋大賞受賞を受賞。ほかに『ドミノ』『スキマワラシ』など著作多数。ことし、「文藝別冊恩田陸 白の劇場」が発売となった。

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