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【東京舞台さんぽ】「ノルウェイの森」を歩く 直子と一緒に四谷から駒込へ

 村上春樹さんの代表作「ノルウェイの森」の第2章には、主人公ワタナベが、亡くなった親友の恋人だった直子と再会し、四谷から駒込まで東京都内を一緒に歩く場面がある。物語の舞台となった1968~70年の街並みを想像しながら、長い散策路をたどった。

 2人はJR中央線の電車内で偶然出会い、四ツ谷駅で降りて「線路わきの土手」を市谷に向かって歩きだす。駅は新宿、千代田両区にまたがっており、2人が歩いたのは千代田区側にある旧江戸城外堀の土手とみられる。

 土手の遊歩道に足を踏み入れると、鮮やかな緑の葉を広げる桜並木や、線路の向こうに見えるテニスコートが作中の描写と重なり、半世紀前にタイムスリップしたような気分になる。途中で水飲み場を見つけ、直子をまねて「ほんのひとくちだけ」水を飲んだ。

 市ケ谷駅を過ぎ、水をたたえたお堀を横目に見ながら飯田橋へ。ここで2人は右に折れ、九段下から神保町へと進む。

 御茶ノ水駅付近から文京区に入り、本郷通りを北に向かうと、右手に東大の赤門が現れた。作中で描かれた時代には大勢の学生が出入りしていたはずだが、現在は耐震診断のため閉鎖中で、寂しげな姿を見せていた。

 2人が駒込駅(豊島区)まで「線路に沿って」歩いた都電の面影を求めて、駅近くの「カメラのハヤシ商事」に立ち寄った。店頭に飾られている停留所の標識は、鉄道好きの店主、林幹夫さん(64)が71年の廃線後に入手した品という。林さんは「子供の頃は、お出掛けといえば都電だった」と往時を懐かしんだ。

 ゴールの駒込駅にたどり着いた時には、四ツ谷駅を出てから2時間以上がたっていた。直子の後を追って歩きながら「散歩というには(中略)いささか本格的すぎた」と驚くワタナベの気持ちがよく分かった。

 【メモ】文京区立神明都電車庫跡公園には、かつて都電で使われていた車両が展示されている。

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