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【BOOK】息子が突然の死、翌日から執筆 「迷宮」めぐる父と子の物語 岳真也さん『翔 wing spread』 (1/3ページ)

 『吉良の言い分』など歴史時代小説で知られる岳真也さんは4年前、二男の匠(たくみ)さんを原因不明の病で亡くした。翌日から書き始めた小説『翔 wing spread』は、このほど第1回加賀乙彦推奨特別文学賞を受賞した。自身と匠さんが共に歩んだ道のりを振り返った連作だ。

文・井上志津

写真・酒巻俊介

 --匠さんは2017年7月8日に30歳で亡くなりました

 「入院先の精神科病院で、突然の心肺停止でした。統合失調症を患っていましたが、回復に向かい、じきに退院する手はずになっていたんです。匠も家族も楽しみにしていたので、未明に病院から電話を受け、信じられませんでした。今も原因は分かりません」

 --匠さんが不登校を始めたのは高校生のときですね

 「中高一貫校の中学時代、女子生徒の前で半裸にされるといういじめを受けたのが主な原因だったと考えています。でも、その事件について私に打ち明けたのは2年後で、すでに休学していましたから、なぜ、その頃に気づいてあげられなかったのだろうと今も悔やまれます」

 --高校を退学し、引きこもりの生活が始まりました

 「それでも大学検定試験を受け、大学に入りましたが、対人恐怖のため入学式に出られなかったのが大きかったですね。この世から消えてしまいたいと考えるようになりました。家庭内暴力が始まり、統合失調症と診断されました。暴力といっても、私たちに飛びかかったりはしないんですよ。家の中の壁を壊す程度です。『死ね』の文字が連ねられたメールが何度も私宛てに送られてきたこともありました。でも、その後はアルバイトに行ったり、入院したりを繰り返しながらも安定して、退院の日を待っていたのです」

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