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【BOOK】息子が突然の死、翌日から執筆 「迷宮」めぐる父と子の物語 岳真也さん『翔 wing spread』 (2/3ページ)

 --亡くなった翌日から小説を書き始めました

 「このまま自分が落ち込んだら最悪だと思い、すぐに『三田文学』編集委員でアメリカ文学研究者の巽孝之さんに『書かせてほしい』と電話をしました。連作の1回目が掲載されたのは半年後。約3カ月で一気に書きました」

 --どんな気持ちで書いたのですか

 「書いている最中に泣いたら書けませんから、冷静だったと思います。今書けと言われたら、書けません。今は読み返すと泣いてしまうので、外では読まないようにしています」

 --「三田文学」と「早稲田文学」に掲載した連作を1冊にまとめました

 「ダブった箇所がありましたから、流れが途切れないよう、全体的にかなり手を入れました。半年間、他の仕事はしませんでした。一貫して、迷宮をめぐる旅をする『父と子』というテーマにできたと思います」

 --本書を読むと、岳さんは匠さんに対して誠実に向き合っていた印象を受けましたが、父親として後悔はありますか

 「いっぱいあります。赤ちゃんのとき、息子を抱っこしたことがないんです。子供は苦手というか…。自分の趣味の競馬には毎月1回連れていき、屋台で焼き鳥を食べたり、おもちゃを買ったりしましたが、日常的に家で一緒に食事をすることもほとんどなかったし、病気になって、初めて親密になったという感じだったのです。病気になってからは山も一緒に登りましたけど…。亡くなってから、僕を尊敬してくれていたことを知り、たまらない気持ちになります」

 --もしも本書を匠さんが読んだら、何と言ったと思いますか

 「何と言ったかな。『やめてくれよ』と言うか、『俺が書かしたんだよ』って言うか、どっちかでしょうね」

 --本書で第1回加賀乙彦推奨特別文学賞を受賞しました

 「実在しておられる作家の中で、私がその文学を一番と思う方が加賀乙彦さんです。そんな尊敬できる方から賞をいただいて光栄です」

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