記事詳細

【新書のきゅうしょ】格差拡大する近年に相似「能力主義」の軋轢社会描く マイケル・ヤング著「メリトクラシーの法則」(至誠堂新書、1965年) (1/2ページ)

 マイケル・サンデルの新著『実力も運のうち 能力主義は正義か?』を手にとったのは、50年以上前、小学1年時の運動会の徒競走でのトラウマ体験が忘れられなかったからだ。

 思い返すと数日前から繰り返すリハーサルも常にビリッケツの6番だった。当日校庭に流れる「天国と地獄」のBGMは「地獄と地獄」でしかなかったが本番も当然の如くビリ。夕飯のちゃぶ台では、見に来た父から「まあ、こんなこともある」とがっかりしたようなため息交じりの言葉をかけられた。サンデルの著は発行数カ月で重版を重ねるベストセラーになっているが、運動会でビリだったのを忘れられない連中がこんなにも多かったとは…

 同書を読んで能力主義については既に60年前に先行した著作があると教えられた。それが英国の社会学者マイケル・ヤングによる1958年の『メリトクラシーの法則』である。日本では至誠堂新書から65年に刊行された。ヤングの書では、階級間の障壁を乗り越えて、能力に基づき出世する「真に平等な社会」が実現すると勝者は敗者を見下し社会的軋轢(あつれき)を招くと説く。

 ヤングは民主主義は人民による支配ではなく才能による支配だと論じる。バーナード・ショーの「全プロレタリアートの独裁ではなく、しごとを考え出し、神聖な目標にむかって先んじて身を挺することのできる五パーセントの人たちによる独裁である」との言葉も挙げる。

関連ニュース