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【新書のきゅうしょ】格差拡大する近年に相似「能力主義」の軋轢社会描く マイケル・ヤング著「メリトクラシーの法則」(至誠堂新書、1965年) (2/2ページ)

 副題に「2033年の遺稿」とあり、能力主義が徹底した21世紀中盤時点から過去を振り返る未来予測書の作り。

 例えば「二十世紀を通じて、組織が大きく、複雑になっていくにつれて、収入の差がひどくなっていった」と描く。知的な優者と劣者の差は際立ち、後者は労働から締め出しをくう。未熟練な作業者が行う仕事は機械化されるが彼らは首にならず、働くロボットを〈世話する〉かわりにただ見つめる仕事をさせるべきと主張される。

 1990年代には知能指数125以上の子供の大部分は同じく125以上の大人の子供となり、エリートはほとんど相続制に近くなっていたと述べている。繰り返すがこれは1958年の著作での表記だ。中流の没落と格差拡大が広がる近年の動きを予測するよう。才能の相続が考慮され赤ん坊の闇取引が増え、「ときにはエリートの家に生まれたばかな子どもに王侯のような持参金をつけて、下層階級のかしこい子と交換するしまつになった」とまで描く。

 ヤングは優者と劣者の階級差に関連し、雑誌「ニューヨーカー」に載ったマンガも挙げている。大男の精神科医師が小さな患者にこう言う。「あなたには劣等感なんかありません。あなたは劣等なんですよ」。(!) (矢吹博志)

 ※小欄では品切れ、絶版も含めた新書名作の“旧書”をご紹介。気になる書籍は、在庫のある書店や古書店などで“捜索”を。

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