記事詳細

【BOOK】人間の美しさとはハートの強さ、カンボジアが舞台「現代の黙示録」 作家・桐野夏生さん『インドラネット』 (1/3ページ)

 直木賞をはじめとして数多の文学賞に輝く作家・桐野夏生氏が「小説 野生時代」の2018年3月号から20年10月号にかけて連載してきた最新作が単行本になった。『バラカ』『日没』で文学の可能性を広げてきた著者による「現代の黙示録」とも言えそうな1冊に秘められた思いを聞いた。

  (文・たからしげる/写真・ホンゴユウジ)

 

 --連載の単行本化ですが、物語の世界は最初、どれくらいできていたのですか

 「実を言いますと、全くできていませんでした。当初はカンボジアに取材に行って、何か材料を探そうと思っていたんですが、途中、ベトナムでエステサロンを経営している日本の女性に会いました。その方がとても美しい方で、彼女から少しインスパイアされたものはあります」

 --物語の舞台となったカンボジアには、特別の想いがあるのですか

 「初めての国で、取材地もアンコールワットに1泊しただけでした。ただし、旅の印象では、急に近代化された一方、古いところもずいぶん残っているといった、どこかアンバランスな感じがありました。特別の想いというより、これからもいろいろ知りたいと思っている国です」

 --主人公のダメ青年(八目晃)は、どんな思いから生まれてきましたか

 「彼が憧れている、もう一方の輝かしいほど美しい3人きょうだいに対しては、やはりダメ男がふさわしいと思って、いつのまにかそうした“魂の小さな”ダメ人間を書いていました。輝かしいものを考えて、そこから必然的に出てきたキャラですね」

 --その「輝かしい」3人きょうだいですが、それぞれは何かの象徴といえますか

 「美しく謎めいた3人きょうだいなんて、実際はめったにいない、稀有な存在だとは思いますが、彼ら3人は、美と勇気と激しい運命の象徴といえるでしょうか」

関連ニュース