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【ノンフィクションで振り返る戦後史】永遠に続くように思えたタクシー行列 1981年を描く 田原総一朗著「電通」(朝日文庫) (1/2ページ)

 田原総一朗によるこのリポートを、私は1981年「週刊朝日」連載中にオンタイムで読んでいた。思えば70年代後半から80年代前半は同誌の黄金時代だった。エッセイでは野坂昭如の「オフサイド」と五木寛之の「深夜草紙」が控え、巻末の「山藤章二のブラック・アングル」は全盛期、街の話題を拾う「デキゴトロジー」の連載も始まっていた。

 大学生だった私は、電通の存在をこの連載ではっきり意識した。特に憧れたのが「ディスカバー・ジャパン」「南太平洋キャンペーン」などを仕切った藤岡和賀夫の話。クライアントの要請と関係なく、池田満寿夫や酒井政利など当時隆盛を誇った著名人らと南太平洋に旅して、映画「エーゲ海に捧ぐ」やジュディ・オングの歌う「魅せられて」などにつながっていったエピソードを胸躍らせつつ読んだ。

 藤岡は「広告が企業や商品を主人として仕えるのはもはや時代遅れ」と論じていた。

 数年後、憧れた広告会社への就職活動に苦労した末、私が入社したのは電通系列のPR会社。その電通本社PR局長の席には功成り名遂げた藤岡がいた。たまに訪れる親会社の局長室に鎮座する彼の姿は後光が差すように見えたもの。

 本書では「まず驚かされるのは、玄関前にずらりと並んでいるタクシーの行列の長さ」とある。そういえば当時、無尽蔵に思えるほどタク券を持つ本社社員にしばしば同乗させてもらい得意先に向かった。絶えることのない築地本社前のタクシー行列は、永遠に続く祝祭行列のように思えた。

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