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【コロナ禍が助長するこころの病】失われた世代を冒す「パーソナリティ障害」 小田急線刺傷事件だけではない (2/2ページ)

 それにしてもおかしいのは、「スクランブル交差点を爆破する」「サラダ油にライターで火を点けて発火させる」などと供述したということです。一流大の理工学部に学んだ人間の発想とは考えにくいのです。

 どこかで急にまともな社会生活から外れる出来事があったのでしょうか。妄想型の「統合失調症」を発症した可能性もあります。成人後に発症する例は意外と多くあります。容疑者は、精神鑑定されると思いますが、もし、精神的な障害があったと認定されれば、無罪もしくは減刑となります。刑法は精神に異常のある者に対しては、そのような措置を取ることを定めています。

 また、殺人未遂としての範囲が、1人かそれとも数人かでは、求刑の期間が変わります。知人の弁護士によれば、もし1人分の被害しか起訴されなくても、求刑は殺人未遂の相場である7~8年を下回らないのではとみています。

 残念ながら、いまの日本社会には、こうした“通り魔”的な事件があります。容疑者の個人的動機がなんであれ、通り魔事件の犯人に共通することがあります。それは、彼らが強烈な「疎外感」を持っていることです。

 お金も職もないうえ、夢も希望もない。そのうえ、スマホばかりやっていると、この世界は完全に閉じられます。狭い世界でその日暮らしが精いっぱいの20代半ばから40の男女、つまり「失われた世代」が、コロナ禍で必死にもがいています。バブル後生まれで、豊かな日本を知りません。

 彼らのケアは、医者の問題であると同時に、政治の問題です。

 ■吉竹弘行(よしたけ・ひろゆき) 1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。

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