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【BOOK】第165回芥川賞・石沢麻依さん 震災を「記憶」することとは何か 『貝に続く場所にて』(講談社) (2/2ページ)

 --今後は

 「寺田寅彦も内田百●をはじめとする、かつての作家たちも震災の記憶のために声をあげてきました。私もまた、一つの声を投げかけることができたのだと思います。その声が発展し(震災を)記憶することとは何かという問いに結びつけばいいと思っています。おそらく、記憶についてもまた、今後もさまざまなかたちで扱ってゆくでしょう」 (事前取材会、選考会後の共同インタビューからまとめた)

 石沢麻依(いしざわ・まい) 1980年宮城県生まれ。東北大学大学院文学研究科修士課程修了。2021年「貝に続く場所にて」で第64回群像新人文学賞を受賞し、作家デビュー。ドイツ・イェーナ市在住。大学でドイツ美術史を研究している。ドイツにはドイツ美術史研究のために13年から14年まで交換留学生としてゲッティンゲンに滞在し、15年から再びドイツに渡り、入学資格を得て17年から別の大学院博士課程で研究生活を送っている。

 日本からドイツ・ゲッティンゲンの大学院で美術史博士論文の執筆に勤しむ「私」は、宮城県仙台市の出身。東日本大震災を経験しているが、そのとき行方不明になった同窓の「野宮」が、震災から9年後、ゲッティンゲンで「私」を訪(おとな)う。メールでやりとりもでき、交流し、そして野宮は同地に滞在中、かつて同地に滞在していた「寺田氏」を同伴して現れる。街では不思議な現象が都市伝説のように流れ、夢ともうつつともわからぬ物語のなかに取り込まれる。第64回群像新人文学賞受賞作品。 (初出 群像2021年6月号)

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