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【BOOK】飛行士だった祖父に思いを馳せて「創作」 戦前が舞台の歴史冒険小説 作家・新野剛志さん『空の王』 (1/3ページ)

 日中戦争前夜の満州国を舞台にした冒険小説『空の王』を出版した新野剛志さん。航空アクションものだが、主人公が操縦するのは戦闘機ではない。新聞社の飛行士だった祖父の話を基に小説にした。(文・井上志津/写真・三尾郁恵)

 --「空の王」の構想はいつ頃からありましたか

 「戦前を舞台にした歴史冒険小説を書いてみたいという気持ちはデビュー当時から持っていました。それと祖父が新聞社の飛行士だったことを結びつけて考えたのは10年ぐらい前からです。祖父は朝日新聞社の航空部に勤めていました」

 --おじいさまが飛行士だったことは子供のときに知っていたのですか

 「祖父は戦後すぐに病気で亡くなって、父も僕が生まれて早い時期に交通事故で亡くなったので、小学校に上がる頃、母から聞きました。まだ写真の電送技術がなかった時代。中国大陸から日本へ写真や原稿を運んでいたそうです。『その頃の新聞社の飛行士は花形だったんだよ』と母は言っていました。『張作霖爆殺事件』の有名な写真も祖父が運んだんですよ」

 --叔父さまがおじいさまの資料をくださったそうですね

 「父の弟です。自分が年を取ったので僕が資料を持っておきなさいということでした。連載を始める2、3年前です。祖父は霜鳥(そうちょう)という俳号を持っていて、戦後、アメリカ軍に航空管制を敷かれたことを嘆いて詠んだ『わが空はわが空ならず秋の空』という割と有名な句も残しているんです。そんな祖父の文章や写真、パスポートなどが、大きな木箱2つ分ぐらいの中に入っていました」

 --親戚の方などに取材はしたのですか

 「あえて話は聞かず、祖父像は資料から想像しました。僕が想像したのは、軽い感じ。単に明るいとか軽薄というのではなくて、軽やかさでした。それが当時の飛行士の典型なのではないかなと思って、主人公である順之介のキャラクターも作りました」

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