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【BOOK】飛行士だった祖父に思いを馳せて「創作」 戦前が舞台の歴史冒険小説 作家・新野剛志さん『空の王』 (3/3ページ)

 --おじいさまが生きていて本書を読んだら何と言ったでしょう

 「『俺はこんなじゃねえよ』とか。話を聞いてみたかったですね。祖母は100歳まで生きましたが、亡くなる前に不思議なことがあったんです。認知症でもう誰のことも分からなかったのですが、『おばあちゃん』って声をかけたら、『昨日、飛行機で○○さんが来たんだよ。訓練用の飛行場が豆満江にできたばかりだからね』みたいなことを言ったんです。祖母は満州にいたことはなくて、それまで祖母から飛行機の話を聞いたことも一度もなかったのに。死ぬ間際に飛行機の話が出てくるなんて、『へえ』と思いました。そこから何か謎が始まるような、不思議な気持ちになりました」

 ■『空の王』中央公論新社2310円(税込)

 昭和11(1936)年の満州国・奉天。新聞社の飛行士・鷲尾順之介は、戦死して英雄になった兄が戦争を阻止する計画を立てていたことを知る。

 その直後、関東軍の梶清剛大尉から、ある「荷物」を内蒙古で引き取り、空輸しろと命令され、愛機ロックヒード・ベガに乗り込んだ。武装していないベガで空に上がった順之介を待ち受けていたものは…。

 「読売プレミアム」で2016年12月から18年3月まで連載。新野さんの祖父・新野百三郎さんも脇役として実名で登場している。

 ■新野剛志(しんの・たけし) 作家。1965年、東京都生まれ。56歳。立教大学社会学部卒業後、旅行会社勤務を経て99年、『八月のマルクス』で第45回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。当時は住所不定の無職生活だったため、「放浪作家」「ホームレス作家」などと呼ばれた。2008年『あぽやん』が直木賞候補。13年には『あぽやん』とその続編がテレビドラマ化された。主な著書に『罰』『パブリック・ブラザース』『キングダム』『溺れる月』『戦うハニー』など。

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