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【BOOK】天才画家の絵の奥に見えた「家族の物語」 「本来得意ではない“東京もの”での受賞は自信に」 第165回直木賞・澤田瞳子さん『星落ちて、なお』 (1/2ページ)

 第165回直木賞は、初候補の佐藤究さん著『テスカトリポカ』と5回目の候補、澤田瞳子さん著『星落ちて、なお』の2作に贈られた。佐藤さんは本作で今年の第34回山本賞も受賞していて、同じ作品で両賞受賞は史上2人目。今回、初候補と5回目候補で対照的だが、同い年で誕生日が1日違いという奇縁の2作家の受賞だった。 文・竹縄昌

 --5回目での受賞でした

 「5回目にもなると候補発表のときに、新聞の見出しでは“澤田瞳子さんら5名”などと候補歴が多い方から名前が出るということを初めて知りました。何度も候補になった思わぬボーナスという感じでした」

 --恬澹(てんたん)としているようにも

 「いえ、候補になれば気持ちの浮き沈みはあります。ただ一方で私が10代から憧れ続けた選考委員の先生方に5回も自分の作品を読んでいただけるなんて、とても幸せなことでした。密かな野望は古代小説で受賞することだったのですが、残念ながら壁が厚かったです。それも私らしいかな」

 --というと

 「狙ったところはほぼ外すといったことです」

 --河鍋とよ(暁翠)を主人公に選んだのは

 「『若冲』(第153回直木賞候補)で天才の人生を書き尽くしたと思ったので、天才画家の絵の向こう側にあるもの、それが家族だと思い、家族の物語を書きたくなったのです」

 --とよは強い女性ですね

 「明治のあの時代に離婚して、娘を育てる強さや、絵を続けながら当時の画壇とやがて距離を置くなど、芯の強さみたいなものには惹かれました」

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