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【BOOK】「生と死」「現実と夢」この世の図面が相手 「京極夏彦さんのように自身の『ブランド化』模索したい」 第165回直木賞・佐藤究さん『テスカトリポカ』 (2/2ページ)

 --その後の作品群は、哲学がベースにあるそうですが、教養主義とも違いますね

 「教養ではなくて、この世の設計図を相手にしたいんです。工事の図面でも数字など物理的な事柄が、実は人の生き死にに関わっている。生と死、現実と夢、それらを成立させている図面を追いたいですね。哲学者のミシェル・フーコーはダイアグラムと呼びましたが、人間の図面にはミッシングリンクとか、まだ欠けているところがいっぱいあります。物語の力を借りながらそれらを追求するのが、フィクションの面白さだと思います」

 --今後は

 「本当のトップになるには、“直木賞作家の佐藤究”と紹介されないことが条件だと思うんです。そこが勝負どころですね。京極夏彦さんは“直木賞作家”とは紹介されない。ただの“京極夏彦”なんです。それほどにご自身のブランドが確立されている。僕も特異なブランド化、独自の進化への道を、寄り道しつつ探していきたいと思っています」

 ■佐藤究(さとう・きわむ) 1977年9月13日、福岡県生まれ。作家。44歳。2004年佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作を受賞し、作家デビュー。雌伏12年後の16年、『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞受賞。18年、『Ank:a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、第39回吉川英治文学新人賞を受賞。ほかに第72回日本推理作家協会賞「短編部門」候補となった「くぎ」など中短篇も。21年、3作目の長篇小説『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞受賞。さらに同年、第165回直木賞受賞。同作は『QJK…』『Ank…』と鏡三部作と言われる。両賞受賞は04年の熊谷達也さん以来史上2人目。

 ■『テスカトリポカ』KADOKAWA・2310円税 

 「テスカトリポカ」とは、生贄(いけにえ)を供されたアステカの神。メキシコの麻薬カルテルに君臨したバルミロは、麻薬戦争で追手から逃れたインドネシア・ジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会い、日本で闇の臓器ビジネスに暗躍する。一方、メキシコ人の母を持つ少年の土方コシモは両親を殺害し、少年院で青春を過ごした。社会に出たコシモはやがてバルミロと出会い彼らの犯罪に巻き込まれていく。闇社会の凄惨な暗闘を圧倒的な筆致で描く話題作。(初出第1部「カドブンノベル」2020年12月号。第2部以降書き下ろし)

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