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【ノンフィクションで振り返る戦後史】「様」付けの奇妙さ…便利さを提供する裏にある労働環境 2017年を描く「潜入ルポamazon帝国」(横田増生著、小学館) (1/2ページ)

 2017年、著者のジャーナリスト横田増生はアマゾンの小田原物流センターでバイト労働者として潜入取材を敢行した。本書は倉庫内での同社を頂点とするまるでカースト制度のようなヒエラルキーを如実に描きだす。

 著者は02年にも物流センターに潜入している。当時下請け運送会社は同社を「アマゾンさん」と呼んでいた。しかし17年に横田がアルバイト面接に出かけた人材派遣会社ではこう説明される。「アマゾン様は、欠勤により働く人が足りなくなることを非常に嫌います」「これまでアマゾン様で買い物をしたことがあるでしょう?」「ご存じのように、アマゾン様の荷物はすぐに届くんです」…。

 17年1月、アマゾンはそれまで派遣会社を通して行っていたアルバイト雇用を直雇用にしようと試みた。当初会社はバイトのほぼ全員が乗ってくると見込んだが労働者に勤務日や労働時間の選択権は全くない。思うように人が集まらず計画を中止にすると同社が通知した際のことをバイト労働者は打ち明ける。

 「やっぱり私たちワーカーのことは大切に考えてないんだ、アマゾン様の都合が優先なんだ」

 派遣会社もバイトも揃いも揃って「アマゾン様」と呼ぶ奇妙さ。

 バイトとして採用された著者は倉庫内で商品を棚からピッキングする作業を行った。まず渡されたハンディ端末の画面上に見つけるべき商品が表示される。そこには商品のある倉庫の階数と棚の位置、棚のどこにあるかがアルファベットと数字で示される。棚まで着くと端末で商品に貼ってあるバーコードを読み込む。もし誤った商品のバーコードを打つと「ピーィピーィ」との警告音が鳴り赤い画面に切り替わり、正しい商品を探すまで次に進めない。

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