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【BOOK】まさに江戸時代は罠、前作『渦』を書き終えた後も捕らわれてしまった 浄瑠璃に命を賭ける、近松半二ら実在の人物が登場 作家・大島真寿美さん『結(ゆい)妹背山婦女庭訓波模様』 (2/3ページ)

 --今作の主人公は半二の娘おきみ。人物づくりはどのように

 「つくらないんです。1行ずつ書き進むにつれ、そこから人物が立ち上がっていきます。そして彼らが、自分はこういう人間だよと、逆に教えてくれるんです」

 --おきみは徳蔵はじめ男性浄瑠璃作者の重要な指南役。でも自らは作品を遺しません

 「史料で半二に娘がいたことはわかっているのですが当時、実際に演じられた演目につながる女性作者の名も記録もみつかりませんでした。だから浄瑠璃界を束ねる要の人物となって私の前に立ち現れたのです。おきみは名を出すことに縛られていない、書きたいから書くんだと、浄瑠璃との距離を保つことで生涯自分の気持ちに対して自由な生き方を貫きました」

 --「妹背山~」は「山の頂、道しるべ」だと登場人物たちは言います

 「当時、陰りを見せ始めた浄瑠璃界を再度盛り立てる大ヒット作であり、今に至る大きな作品です。こうした打ち上げ花火のような演し物(だしもん)が生まれることで人々を巻き込み、芸術や文化の継承の力となることを知っていたのですね」

 --最終章は「硯(すずり)」。あの近松門左衛門から脈々と受け継がれ、最後はおきみの手に

 「天明の大火をくぐり抜けたという設定なので、硯は作者たちが常に手元に置き使い続け、火の手を逃れ持ち出されたに違いない、と。そうすると手のひらにのるぐらいの丸くてこぶりなサイズでなければと考えました。硯のモデルにした品を参考に、本の裏表紙にイラストで紹介していますよ」

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