記事詳細

【BOOK】科学的でない霊現象を受け止める「大切さ」 僧侶と医師の話聞き、除霊の「記録」を決心 作家・奥野修司さん『死者の告白』 (3/3ページ)

 --死ぬとはどういうことでしょうか

 「死とは何かというより、死をどう受け止めるかですが、おそらく世代で違うのではないでしょうか。10年ほど前のデータですが、50代以上ではあの世を信じているという人が3割ほどしかなく、逆に20代では5割が信じていました。敗戦後に生まれた団塊の世代は、死ねばチリになると教えられてきました。死生観は、その時代やその地域の文化と密接に関わっているのだと思います」

 --本書を書き上げて、ものの見方が変わりましたか

 「これまで書いた作品と基本的に向き合い方は同じですので、ものの見方が変わることはありません。ただ、私たちが事実というとき、たいていの場合、目に見えないことは蔑(ないがし)ろにされてきました。もっと見えないことを大事にしたいと思いつつ、そうなるとノンフィクションから離れていくので痛しかゆしです」

 --今後、興味の対象にしたいテーマは

 「若年性認知症の人たちの声を聞き取って『ゆかいな認知症』にまとめましたが、高齢の認知症の人たちの声は、うまくしゃべれないせいか誰も聞こうとしません。彼らの思いを聞き取って分析できたらと思っています」

 ■『死者の告白』(講談社、1760円税込)

 人が死ぬとき、合理的に解釈できない不思議なことがしばしば起こる。総計2万2000人余りの命が失われた東日本大震災のような過酷な状況下では、なおさらだろう。震災後の2012年、宮城県を訪れた著者は、当地の古刹・曹洞宗通大寺の金田諦應住職が、死者の霊に憑依されて苦しんでいる20代の女性・高村英さんを救うために続けている「除霊」の現場に足を踏み入れた。長期間の取材を通して見えてきたのは、人の生と死を超越する「霊魂」の謎めいた世界だった。

 ■奥野修司(おくの・しゅうじ) 1948年、大阪府生まれ。73歳。立命館大学卒業。ノンフィクション作家。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。著書に『ねじれた絆』『心にナイフをしのばせて』『花粉症は環境問題である』『それでも、世界一うまい米を作る』『放射能に抗う』『沖縄幻想』『再生の島』『「副作用のない抗がん剤」の誕生』『魂でもいいから、そばにいて』『ゆかいな認知症』『本当は危ない国産食品』ほか多数。

関連ニュース