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【小倉久寛】野獣系の成功法は寄り道せず正攻法

2010.09.29

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小倉久寛【拡大】

 誰が言ったか知らないが、「女性はギャップに惹かれる」そうだ。その真偽は、恋愛偏差値が低い記者には分からない。でも、この人を見ると、“ギャップ説”は何となく信じられる。この野獣系ルックスで元宝ジェンヌの超美人をゲットしてしまったのだから。さぞかし見た目と大きなギャップのある手練手管で奥さんをメロメロにしたに違いない。

 「いやいや、別に何もないですよ。『運が良かった』としか言えないですね。まあ、でも、『結婚してくれ』というのは100回ぐらい言いましたけどね」

 正攻法で正面突破をかけたら門が開いた、というわけだ。もっとも、この人が超美人と並んでいること自体が外野から見ると相当なギャップではあるが…。

 役者としての仕事もこんな調子。寄り道せず正攻法でやってきた。

 「大学を卒業して劇団に入って以降、なぁんにも変わってないですね。うちの劇団は毎年秋に公演があるんです。そのために稽古して舞台を踏んでっていう生活が、もう32年も続いてる。なんだか毎年、学園祭をやってるような感覚です」

 今年もその“学園祭”の季節がやってきた。10月1日から劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)の第48回の本公演が始まる。座長の三宅裕司が中心となり、毎回、アクションありコメディーありの超ハイテンションな舞台を見せてくれるが、今回のテーマは「悪」。人間の心の中にある「善と悪」を浮き彫りにする謎のウイルスが蔓延するところから物語は始まる。

 「無菌社会というんでしょうか。異質なものに過剰反応し、ことごとく排除しすぎる風潮を感じるんです。今回の舞台は、そんな風潮をチクリと刺すような内容になっています」

 江戸の昔、庶民の間で「白河の清きに魚も住みかねて〜」という歌が流行った。あまりにも清く美しい川には魚も住みにくい−という内容で、当時の幕府の過剰な潔癖主義を揶揄したものだ。すべてが体裁よく“コーティング”された今の世と通じるものがある。

 「子供に『アブナイから触っちゃダメ』とか『近づいちゃダメ』とかね。過保護にしすぎて日本人全体の抵抗力が弱くなっているような気がします。舞台では『犯罪と悪は違う』というセリフがあります。悪知恵や悪だくみは犯罪にならないでしょ? いい子ちゃんばかりじゃダメ。『悪い』モノだって必要なことがあるんです」

 観客を100%満足させる極上のエンターテインメントの中に、こうしたシリアスなテーマがちりばめられているのが「SETの魅力」という。

 ところで、この人にはもうひとつ「ギャップ」がある。こう見えて実は運動神経抜群なのだ。

 「けっこうミーハーなところがありまして。東京オリンピックを見て高校で器械体操を、『空手バカ一代』を読んで大学では空手部に入りました」

 その運動神経は舞台で縦横無尽に生かされ、ジェットコースターのような“SETワールド”に観客を引き込むガイド役を長年担ってきた。役者の道に入るきっかけとなったのも持ち前のバネだという。

 「旗揚げしたばかりの劇団のオーディションで、やることがないから、バック転・バック宙をやった。おかげで合格した…と言いたいところですが、結局その時受けた2人とも合格したんですけどね。ハハハ」

 取材は終始なごやかムードだった。しかし結局、最後まで美女を落とす方法は明らかにならず…。

 釈然としないまま席を立とうとした記者に、「毛深いイメージがあるみたいですけど…」と言いながらおもむろに腕まくりを始めた。見ると意外にも二の腕はツルツル。毛むくじゃらの手を示して、「この手は営業用。イメージを裏切っちゃうから、なるべくここから上は見せないようにしてるんですよ」とイタズラっぽく笑った。

 なるほど、この茶目っ気とツルツルが“秘密兵器”だったというわけか。

ペン・安里洋輔/カメラ・中鉢久美子

プロフィール 小倉久寛(おぐら・ひさひろ) 1954年10月26日生まれ、55歳。三重県出身。学習院大法学部卒後、劇団「大江戸新喜劇」を経て、79年に三宅裕司主宰「劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」の旗揚げに参加。同劇団の舞台に立ちながら、朴訥な風貌と抜群の演技力で映画、ドラマなど多方面で活躍中。趣味はギター、ウクレレ、サーフィン。 10月1日から17日まで東京・池袋の東京芸術劇場中ホールで、SETの第48回本公演「オーマイ・ゴッド・ウイルス」に出演する。

 

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