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【岩田聡】既存の枠から飛び出す「ニンテンドー3DS」発売

2011.01.18


任天堂・岩田聡社長【拡大】

 老若男女がこぞって携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」を買い求め「脳トレ」に興じたのも今は昔。携帯電話やパソコンで気軽にできる「無料ゲーム」が急増し、向かい風が吹き荒れる中、任天堂は2月26日に「ニンテンドー3DS」を発売する。

 専用メガネが不要で、裸眼で3Dが楽しめるゲーム機。とはいえ、お値段は2万5000円。社長、今はタダでゲームが遊べる時代なのに、本当に売れますか?

 「3DSは、現物を見ていただかないと面白さが伝わらない商品です。そこで先日、体験会を実施しました。すると、たくさんのお客さまから『本当に3Dだー!』と言っていただけて、十分手応えを感じています。体験会は、お天気にも恵まれたし、これは幸先いいぞと思っています」

 えっ、お天気で幸先がいい?! 岩田さん、業界トップの任天堂社長がそんなノリでいいんですか?

 「私は、自分たちが世の中を変えられるかもしれないと信じている、とってもおめでたい楽観主義者です。天気がよければ、天も自分に味方してくれたと思えるくらいにね。自分にとって不都合なことを何かのせいにすることは世の中によくありますが、私は誰かのせいにしたいと思ったことはないです。それより『自分にできることが何かあるはずだ』と思うほうが、やりがいがありませんか?」

 なるほど、岩田さんはとても前向きな社長さんなのですね。

 「脳トレが流行った時も、DSを買ってくださった人が周りの人に『脳年齢を測ってみない?』と言ってくれて、人づてでDSの価値が伝わったと思います。だから今回も、同じように3DSの魅力や価値が広がっていくとありがたいんですがねえ」

 脳トレみたいに魅力が伝わりますか?

 「ええ、たとえば、3D写真が撮れますので、撮った写真を周囲の人に見せれば、面白がっていただけると思います。カメラを通して現実の世界に情報を付け加えるAR(拡張現実)という技術を使って遊ぶのも面白いですよ。このゲームは最初から本体に内蔵されています」

 3DSはソフトがあってもなくても、楽しいゲーム機なのですね。でも岩田さん、今は携帯電話でもゲームが遊べる時代なのに、なぜ任天堂はわざわざ3DSを売るのですか?

 「任天堂は自分たちのソフトの価値を認めていただきたくて、ゲーム機というプラットホームを自社で作っています。たしかに今は、何千円もするゲームソフトの価値をお客さんに認めていただくためのハードルは大変高くなっていると思います。でも私は、大変あきらめが悪い楽観主義者でもありますから、今度も3DSの楽しさを通じてソフトウエアの価値をお伝えできると信じています」

 たしかに任天堂は、さまざまな挑戦を続けてきました。DSで提案したタッチパネルは、昔は銀行のATMくらいしかなかったのに、いまやありとあらゆる情報端末がタッチパネルを搭載していますね。

 「任天堂が『5歳から95歳までゲーム人口を増やす』と言ったときや、2画面の携帯ゲーム機(=DS)や棒状のリモコンを振り回すゲーム機(=Wii)を提案したときも、世の中から『そんなのありえない』と言われました。でも結局は、皆さんに受け入れていただけました。だから私は、社員に『ありえない』というところまで考えていいんだと伝えたい。そして今後も、任天堂がそういう会社でいられたらカッコいいなと思いますね」

 ペン・石島照代/カメラ・三尾郁恵

 ■いわた・さとる 1959年12月6日北海道生まれ、51歳。高校在学中から、ゲームのプログラミングに熱中するようになる。東京工業大学工学部情報工学科卒業後の81年、当時室蘭市長だった父親の反対を押し切り、大学時代のアルバイト先だったソフトウエア開発会社、HAL研究所に入社。92年に同社社長。2000年、任天堂の山内溥社長(当時)に請われて任天堂入社、取締役経営企画室長を経て02年に43歳で社長に就任した。コピーライターの糸井重里氏と親交が深いことで知られる。

 

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