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【塚地武雅】笑いまっしぐら 「食えなくても舞台に立てればいい」

2012.10.11


塚地武雅【拡大】

 人気お笑い芸人として活躍する一方、ここ数年は個性派俳優としても引っ張りだこ。公開中の「くろねこルーシー」では映画単独初主演を飾った。

 「お話をいただいた時、『ええっ、俺でええの?』と思いましたけど、台本を読んだら、猫2匹との“トリプル主演”やな、と納得しました」

 それはもちろん、ご謙遜。映画「間宮兄弟」などで見せた味のある演技に、亀井亨監督から熱烈オファーを受けた。今作では、妻子からも愛想を尽かれされたダメ男の占い師が、黒猫のルー、シーとの出合いを機に大切なものに気づき、男の優しさ、強さを取り戻す姿を繊細に演じ切った。

 「役作りって知らないからできないんですよ。でもコントをやる時に、こいつこういう奴でこんな口調で…と細かく考えるのが好きだから、同じように役のイメージを膨らませてやっていますね」

 俳優としての売れっ子ぶりには「ブサイク枠が空いていただけじゃないですか。イケメンの俳優さんはいっぱいいるから」と笑い飛ばす。

 とはいえ、映画やドラマは幼少時から大好きだった。自宅の部屋には「大好きな特撮にアニメ、国内外のドラマや映画のDVDで壁面ができている」という。

 「『寅さん』シリーズ、『トラック野郎』シリーズとか刑事モノとか、物心ついたころからダメ男の話が好きなんですよ。好きな相手のために一生懸命になって空回りして結局振られて…。でも哀愁があってかっこええなって。モテへん自分には共感できた。美男美女のカップルがくっつくのは、嫉妬してしまうんでね。えへへ」

 好きな俳優は「いっぱいおるけど、ジャック・ニコルソンとか」。やはり演技派好みだ。

 「ブサイクでモテへん、でもモテたい」という意識で、お笑いのセンスも磨いてきた。

 「小学校のころからクラスで面白いことをやって周りを喜ばせるのが好きやった。イケメンとか勉強ができるとか足が速いとか、そういうことではかなわへんから、笑いでモテようとしていたんでしょうね」

 大阪に育ち、お笑い舞台や吉本新喜劇に親しみ、いずれは「自分もやりたいと思っていた」。だが、昔かたぎの父親には本音を言えないまま大学に進学。卒業後、メーカーの営業マンとして働き始めたが…。

 「面白いことを思いつくと手帳に書きとめていました。仕事とは全然関係ないのにね。で、ある日の昼休み、会社の自分の机の上にある、2冊になった“ネタ帳”を見て、やっぱりお笑いがやりたい、ごまかして生きるより、イチかバチかやってみよう、と。あのときの光景は今も心に残っています」

 半年勤めた会社を辞め、お笑いをやると両親に打ち明けると「父親にはキレられ、母親には頼むからやめてと泣かれました」。

 それを振り切って上京。24歳でお笑い養成スクールに入り、25歳でコンビ結成。だが、お笑いの仕事とバイトだけでは食えず、家賃も払えないほどに。それでも、腹はくくっていた。

 「ひとつ職業を辞めて始めたから、これしかない、最悪、食えなくてもいい、舞台に立てていられればいい、って思ってましたね」

 努力が実り、テレビのレギュラー出演が決まり、大ブレークした。人気の維持が難しく新陳代謝も激しいお笑い界だが、焦りはまったくない。

 「単純にお笑いや、この仕事が好きなんで、好きこそ物の上手なれじゃないけど、面白いことをしたい。それを続けていれば、笑ってくれる人がいる。負けることも多いけど、それでも生きているっていうのが唯一の強み、ですかね。好きなことができているから毎日楽しいし」

 それでも、悩みはある。

 「奥さんが欲しいですね。遺伝子も残したいし。周りで結婚して男としての強さや責任、仕事への熱を増している芸人を見ると焦ります。俺、何も変わっていないやんかって」

 理想の結婚とは?

 「ウケるかどうか常にプレッシャーを感じる毎日なんで、何言っても笑ってくれる人がいい。性格悪いとか変わっていても、笑える人ならいいですね。とにかくいつも笑っていたいなぁ」

 恋をしたら…。

 「好きなことに没頭するタイプなんで、お笑いはしばらくやめます、なんて言い出すかも。ハハハ」

 この、不器用なほどの純粋さが多くの人に愛される理由。(ペン・斉藤蓮 カメラ・大西史朗)

 ■つかじ・むが 1971年11月25日生まれ、40歳。大阪府出身。桃山学院大卒。お笑いコンビ「ドランクドラゴン」のボケ担当。95年、芸能事務所「人力舎」の養成所スクールJCAに入所。そこで出会った鈴木拓と翌年、コンビ結成。バラエティー番組「エンタの神様」「はねるのトびら」などで大ブレーク。2003年から俳優も始め、06年、映画「間宮兄弟」(森田芳光監督)に佐々木蔵之介とW主演。同年の国内映画祭新人賞を総ナメに。07年からは故・芦屋雁之助さんの後を継ぎ、ドラマシリーズ「裸の大将」で山下清役を好演。放送中のNHK大河ドラマ「平清盛」では藤原信頼役を好演した。

 

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