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【大崎洋】吉本興業社長は“闘う人情家”「さんまが紳助を一番心配している」

2013.04.25


吉本興業・大崎洋社長【拡大】

 101年目に突入した笑いの殿堂を率いる船頭は、入社当時から出世コースのラインとは無縁の窓際社員だった。2浪して入った大学でサーフィン三昧の青春時代を送り、休みはまとめてもらえる会社だと勘違いして入社したのだという。

 「僕が吉本に入った頃は、やすきよさんの稼ぎで社員が食べられていた規模でした。漫才ブームの前で、劇場には『悪場所』の雰囲気がぷんぷん。滅び行くものを芸人さんと走りながら売っていくんやな、と最初に思いましたね」

 同期入社3人のうち、ひとりは、なんば花月と人気者の桂三枝(現・文枝)や売り出し中の明石家さんまを受け持ち、もうひとりは、うめだ花月と絶頂期の横山やすし・西川きよし、勢いのある島田紳助・松本竜介の担当に。自身は、大阪のなんば、うめだより格下と見られていた京都花月に配属され、ミスター吉本といわれた木村政雄さんの下で猛烈にシゴかれた。

 「僕がダウンタウンをやりだす手前までは、吉本の社員って売れてるタレントのマネジャーをしたいと思うモンばかりでした。僕は目の前にダウンタウンしかいなくて、めっちゃくちゃ面白いな、と思ったんですが、みんなは売れてる方に忙しくて、その良さが分からなかった」

 普段着でボソボソとしゃべり、立ち話か漫才か区別がつかない松本人志と浜田雅功の笑いは当時、批判を浴びた。唯一の理解者として若手中心の心斎橋2丁目劇場や、大阪ローカルの番組で後押しし、尻込みする東京進出への道をつけた。

 しかし、ダウンタウンの人気とともに出世街道を歩んできたわけではない。吉本には代々、創業家を中心とした出世ラインがあったことを認める。

 「(元会長の)林正之助さんから続く主流のラインから、かわいがられる、ほどよき距離をおく、僕のような窓際−の3つのパターンがあった。家庭的なホワンとした会社やった。それが正之助さんが亡くなり、フジテレビから横澤彪さんが入って来られ、東京を開拓された木村さんが大阪に戻され、両常務が並んだ。そして、創業家・林マサさんが仲良くなった方と現れた。その3つか4つのキーワードの中でグチャグチャになったんだと思ってます」

 納得のいかないことには上司だろうと、創業家だろうと噛みつき、「いやいや、それは違うで!」と時には啖呵を切って、吉本を「社員のもの」にまとめ上げてきた。

 武闘派は人情家でもある。2年前に暴力団関係者との「黒い交際」を理由に引退した島田紳助さんと昨年8月に面会。創業100周年記念の最後の特別公演での復帰をひそかに打診していた。

 紳助さんは、「正直、まだちょっとキツいんや」と拒み、「まあ、5年後か10年後か、CSの番組かなんかでトークとかをできればええかなあ」と、穏やかな表情で話したという。

 「全然やる気ないねん、みたいな感じでしたね。同期のさんまが紳助のことを一番心配している。僕は世間様に許していただけるなら、やり直しのきく世の中であってほしいと思うんです。法律は犯してないし、逮捕もされてませんしね」

 その紳助さんが目をかけてきた松本人志は、いま映画監督として異才を発揮。カンヌ国際映画祭には間に合わなかったが、4作目となる新作の完成が待たれる。

 かつて、大阪の放送局の楽屋で、「これから本出したり、映画撮ったりいろんなことしような」と、話しかけると松本はこう答えたという。

 「大崎さん、何でそんなこと言うんですか。僕は金持ちの家に生まれたわけでもないし、運動神経がいいわけでも、ギターが弾けるわけでもない。やっとお笑いっていうものを見つけて、100メートル走を一生懸命、走ろうとしているのに。走り幅跳びもしなさい、棒高跳びも、て」

 懐かしそうに思い出し笑いをしながら、こうつぶやいた。

 「まあ、僕は単なる大阪の兄ちゃんなんですけど。映画、やった方がええんちゃうん?って。かといって映画だけでは食べていけないやろし、テレビも好きやろし、もう映画ええわ、と言う日が来るかもしれない。今さら僕が話をすることもないような気がします」

 芸人をその気にさせることに長けた人だ。 (ペン・中本裕己 カメラ・伴龍二)

 ■おおさき・ひろし 吉本興業社長。1953年7月28日生まれ、59歳。大阪府出身。関西大学社会学部卒業後、78年に入社。昨年の創業100周年プロジェクトで陣頭指揮を執り、目玉だった1年がかりの舞台公演「吉本百年物語」をこの3月に無事終えた。

 これからの100年に向け、「大阪にキャパ50人でもいいから5つでも10個でも劇場を作りたい」と原点を見つめつつ、今春、中学生の新卒採用にも踏み切った。「僕らも若い子から刺激を受けて新たな発見がある。それと、高齢でも働ける職場にしたい」。

 新刊の一代記『笑う奴ほどよく眠る 吉本興業社長・大崎洋物語』(幻冬舎)では、嵐のような漫才ブーム、怪文書と社内抗争、お家騒動と脅迫事件、亡き母への想いなど、激動の歳月と様々な思いが綴られている。著者は因縁も関係も深い、元「噂の真相」編集部、常松裕明氏。マンツーマンの取材を経て仕上げた。

 

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