ぴいぷる

【篠田三郎】誠実で真面目、安心感与えるいぶし銀の声

2014.04.03


篠田三郎【拡大】

 篠田三郎という俳優は「いぶし銀」という言葉が似合うのではないか。この類の俳優が少なくなった芸能界で、今や貴重な存在である。

 そんな篠田さんが、ウルトラマンシリーズの「ウルトラマンタロウ」で、主役を演じていたことを知っている人も少なくなった。シリーズを盛り上げるのにひと役買ったのだが、あまりそのことを語らない。

 「過去の作品にはそれぞれ思い出がありますが、ぼくにとって最も大事な作品は、今とりかかっている作品なんですよ。これから多くのお客さんに見てもらい、一人でも多くの人に感動をあたえる。そのために自分の持っているものをいかに生かすか。そこに集中したいんですね」

 誠実で真面目、俳優としてのそんな姿勢が、見る者に「安心感」をあたえるのだろう。画面に篠田さんが出るとホッとする人が多い。現在とりかかっているのは客演する劇団民藝の舞台で『八月の鯨』(ディヴイット・ベリー作、丹野郁弓訳・演出)だ。

 「映画化され世界的に有名になった作品です。アメリカのメーン州の島で毎年避暑をするリビー(奈良岡朋子)とサラ(日色ともゑ)の姉妹のところに、ロシアの亡命貴族マラノフが出現することで波紋をひろげていく。マラノフが僕の役です」

 老境を生きることの意味を静かに問いかける名作で、映画は世界的に大ヒットした。映画の舞台化と思われそうだが、戯曲が先である。

 「5月から9月にかけて北は北海道から南は九州まで公演します。全部で100ステージほどです。舞台は直にお客さんの反応がわかるので怖い。でも面白い。都会と地方では反応がかなり違うし、北と南でも違う。地方公演の面白いところですね」

 今は舞台の仕事が比較的多いが、もともとは映画俳優を目指していた。

 「親父が中小企業をやってたもので、中高生のとき、よく従業員に連れられて映画を見にいったんですよ。ある時、新聞に大きく『あなたをスターに』という広告が載ったんです。これだ! と思いましたね」

 東宝と大映を受けて大映に合格した。大映のニューフェースの18期生である。高校を中退し、半年間、発声法から日舞、ダンス、歌など俳優としての基礎力を鍛えられた。

 影がさしてきたとはいえ、まだ映画の「黄金期」。養成期間が終わると、大映と専属契約を結んだ。森鴎外原作の『雁』で初めて台詞がついた。

 「台詞は一言なんですが、すごく緊張しました。小沢栄太郎さんの扮する旦那が、若尾文子さん演じるおメカケさんの『お玉』のもとに通う。僕は酒屋の小僧です。御用聞きにうかがうと、鳥カゴに蛇がからみついていた。お玉に、それを捨ててきましょうかという台詞なんですが、うまくいえなくて。何度もNGを出したんでカメラマンから皮肉をいわれましたよ。『そんなにフィルムつかうなよ。高いんだから』」

 俳優として注目されたのは、関根恵子(現・高橋惠子)と共演した青春映画だった。

 「高校生同士の恋物語で、ちょっとお色気のあるマンガみたいな内容でしたね」

 1971年、関根と共演した『高校生心中・純愛』が大ヒットした。ところが、その年の暮れ大映は倒産してしまった。幸いテレビから出演依頼があった。

 「『ガッツジュン』に出ないかと。スポ根もので『柔道一直線』の野球版ですね。そのあと『ウルトラマンタロウ』の役がまわってきたんです」

 1年間を通じての放送で、篠田さんは一躍子供たちの人気者になった。振り返ると、映画にテレビに舞台にと数えきれないくらい出演した。舞台では野口雨情の半生を描いた『枯れすすき』が記憶に残る。

 「僕はわりと『良い人』の役が多いんですが、この作では野口雨情の影の部分も描いてます。共演の林美智子さんや日色ともゑさんたちと一緒に野口雨情記念館に行ったり、雨情のお孫さんから話をきいたりして、一緒に作り上げたという印象があります」

 声の仕事にも興味を持っている。

 「藤沢周平作品の朗読をやってきて、今年もやる予定です。機会があれば、東北の被災地の子供たちを励ますような朗読を、ぜひやってみたいですね」

 いぶし銀の声は癒やしに通じる。声のもつ魅力を多くの人に再認識させる。そんな仕事も今後の篠田さんに期待したい。 (ペン・香取俊介 カメラ・宮川浩和)

 ■しのだ・さぶろう 俳優。1948年12月5日、東京都生まれ。65歳。日本大学第二高校在学中、大映の第18期ニューフェースに合格。71年、関根恵子と共演した『高校生心中・純愛』が大ヒット。大映倒産後、円谷プロの「ウルトラマンA(エース)」に続くウルトラマンシリーズ第5作「ウルトラマンタロウ」(73〜74年)の主役に抜擢され人気を確立。以後ドラマと映画、演劇に数多く出演。

 舞台『八月の鯨』では5月24日水戸芸術館ACM劇場ほか、全国約100ステージをこなす。

 

注目情報(PR)

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

実践で使える英会話を習得!業界最高峰の講師がサポートします。毎日話せて月5000円《まずは無料体験へ》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

サンスポ予想王TV

競馬などギャンブルの予想情報を一手にまとめたサイト。充実のレース情報で、勝利馬券をゲットしましょう!