フジテレビの看板女性アナとして23年走り続けてきた。現在は、アナウンス室チーフアナウンサー。最近、私生活でも新たなチャレンジに挑んでいる。
「昨年の秋から6歳の娘と一緒に本格的に水泳を始めました。初級スクールで『平泳ぎが速い』と言われたので、仲のいい榎並(大二郎アナ)に誘われてフジ水泳部に入部しました。バラエティー制作の年下の男子部長にも『平泳ぎが速い』と言われ、9月に、ある公共の大会に出ることになりました」
50メートルは「余裕」だそうで、タイムは1分4秒となかなか。
「脚力があるらしく、手の掻き方を何とかすればいいみたい。大会までに1分を切ろう! と」
もともと小学生時代から素養があった。
「地元・尾道の海で、我流で泳いでいました。小6の時、市の大会でクロールの25メートルで優勝したこともあります。タイムが18秒くらいだったと思います」
実力派スイマーだと分かったところで、気になるのはやはり水着姿。
「大親友の武田祐子(アナ)に水泳を始めた話をしたら、『水着姿について何て言われたんですか?』って聞かれまして。何も、と答えたら、『えっ、キクさんの水着姿にみんな反応しないんですか!』って大爆笑。水着は主人が選んでくれた本格的な競泳用。練習では誰も私のスタイル的なことには目もくれず…あれ? みたいな、ハハハ」
バラエティー番組などで見せる飾り気のないキャラクターそのまま。「世界の海を泳ぎます。まずは地中海かな」と夢を明かした。
本業も勢いづいている。昨年、新たな課題に直面した。女子大生がしのぎを削る「2013富士山女子駅伝」の中継。
「(中継所で)2分間くらい1人でしゃべる中で、選手たちの思いを2、3秒のコメントに凝縮して伝える。本当に難しいと実感しました。各大学のデータを100取材して2か3を出す感覚ですが、100では足りない。それぞれが抱える事情に感動して、一瞬で良いことを言ってあげられたら、と思うんです。冬の開催に向けて今年はこの時期から取材をさせてもらっています」
新人時代には、苦い経験もあった。
「『ナイター速報』という約5分のミニ枠です。2年目だったので予定稿を作って読み、うまくいっていたんです。ところがある時、『神宮球場、ヤクルト対巨人第◯回戦…』と話している間に、カキィーンって悪夢の音が。桑田真澄投手が打ちました。頭の中にいろいろ駆け巡ってしゃべれなくなり、1分近い素(間)を作ってしまった。上司にこっぴどく怒られました。あるがままをしゃべればいい実況に慣れていない上に準備不足でした」
すべてを糧とした今、フジテレビのアナウンサースクール「アナトレ!」の講師を務める。
アナウンサー志望の学生が集う講座では、自身が大学時代にOG訪問した安藤優子キャスター(55)の“安藤イズム”を伝授している。
「どうしたらアナウンサーになれますか? というベタな質問には、『遊びなさい』と。アルバイトでも趣味でも何でもいいから一生懸命に経験して、引き出しをたくさん持ったキラキラした人間になりなさい。人間性を養えば魅力的なアナウンサーになれます、という意味です」
もうひとつ、社会人向けの人気講座「朗読コース」を担当する。
「ドラマの監督が演出する発表会に参加できる、という目標が他のスクールにはない魅力だと思います」
それにしても多彩な活躍だ。
「自分の範囲を決めてしまうと終息してしまい、もったいない。踏み出して活動の場を広げる40代、50代にしたいです。女子アナにスポーツ実況は無理…と見る向きもありますが、幸いウチの局ではそういう風潮がなくチャンスをいただけた。私がやることに続く後輩が出てきてくれたら楽しくなるかな、と思います」
視聴率戦争の荒波もスイスイと泳ぎ切る勢いだ。(ペン・斉藤蓮 カメラ・矢島康弘)
■にしやま・きくえ フジテレビアナウンサー。1969年6月22日生まれ、44歳。広島県尾道市出身。実家は有名老舗旅館。上智大学文学部卒業後、92年、フジテレビ入社。「FNNスーパータイム」のお天気アナ、「笑っていいとも!」のテレホンアナからスタート。96年、「プロ野球ニュース」週末キャスターに。2001−07年、「FNNスーパーニュース」サブキャスターなどを務める。
私生活では97年6月、1歳年上の同期社員と結婚。07年11月、長女を出産。08年9月、仕事復帰。現在のレギュラーは、めざましテレビ「きょうのわんこ」ナレーションほか。
■アナトレ朗読コース第34期発表会 15日13時半開演 東京・お台場のフジテレビ1階マルチシアターで。出演は、受講生のほか、西山喜久恵、奥寺健、松尾紀子、梅津弥英子、石本沙織各アナ(予定)。入場無料。申し込みは、同局「アナトレ」のホームページから。